第50話:完全消滅!? 煙の向こうのザマァな結末と祝杯の夜
キィィィィィィン……。
極大消滅砲の放った凄まじい光の奔流が収まり、地下迷宮の最奥には、耳が痛くなるほどの静寂が訪れていた。
「……ふぅ。ちょっと出力を上げすぎちゃったかしら」
私が額の汗を軽く拭いながらスマホの画面を見ると、【前方エリアのバグ(敵生命反応):0】の文字が清々しいほど綺麗に表示されている。
目の前に広がっていたのは、頑丈な鉄扉も、不気味な魔法陣も、黒幕が自慢気に語っていた古代の魔力増幅炉も、すべてが文字通り『跡形もなく消滅した』巨大なクレーターだった。壁の岩肌はユキの聖魔力の熱でドロドロに溶け、まるで綺麗なガラス細工のようになっている。
「ひ、ひえぇぇ……っ! お、お助け、お助けくださいぃぃ……っ!」
クレーターの端っこ、辛うじて消滅を免れた崩れた瓦礫の隙間で、裏組織の黒幕(自爆しようとしていた男)が、煤まみれになってガタガタと震えていた。
衣服はボロボロ、自慢の魔導具は粉々。さっきまでの威勢はどこへやら、彼は腰が完全に抜けた状態で、私を見て、まるで本物の魔王でも見るかのように白目を剥いて怯えている。
「あら、生きてたのね。自爆システムを強制終了(物理破壊)された気分はどうかしら?」
私が一歩近づくと、男は「ひぃっ!」と短い悲鳴をあげて頭を抱えた。理屈やデータ戦をすべて置き去りにしたママのフルパワーの前に、組織のプライドは完全に塵となったようだ。
「……見事な一撃だ、ユキ。俺の闇魔術で追撃するまでもなかったな」
ギルバートが剣を鞘に収め、呆れつつも心底愛おしそうに私を後ろからぎゅっと抱きしめてくれた。彼のアメジストの瞳には、誇らしげな光が満ちている。
「本当に素晴らしい破壊力ですわ、ユキ! お母様、感動して馬車の予備の爆裂弾を使い損ねてしまいましたわ」
「うむ、さすがは我が娘。これなら帝国の軍勢が攻めてきても一人で防衛できるな。ハハハ!」
お母様とお父様も、クレーターを見下ろしながら実家メンバーらしい豪快な笑顔で拍手を送ってくれる。
『ふん、当然の結果だな。我が主の機嫌を損ねた時点で、この組織のデータはすべてクラッシュ(崩壊)することが確定していたのだ。――さあ、レオ、悪い奴らは全員お片付け完了だぞ』
本来の聖獣の姿から、いつもの可愛い子犬サイズにポンッと戻ったランが、お母様の腕の中にいるレオの顔を優しく舐めた。
「キャッキャ! あぅー!」
レオは何が起きたのか分かっていない様子だけど、パパとママ、そしておじいちゃんおばあちゃんが笑顔なのを見て、ちっちゃなおててを振って大喜びしている。その笑顔を見た瞬間、張り詰めていた緊張が完全に解け、私の胸に最高の爽快感が広がった。
◇◇◇
その日の夜、王宮の大食堂では、アラカルト夫妻やハンスさんたち職人連合も招いて、盛大な「完全勝利の祝杯(バグ退治パーティー)」が催されていた。
「ユキ、本当にお疲れ様。これからはまた、いつもの平和なハッキング育児ライフに戻れるな」
ギルバートが極上のワインが入ったグラスを私のグラスにカチンと合わせ、優しい笑みを浮かべる。
「うん! でもね、ギルバート。あの黒幕の残党や、今回の事件のログを解析したんだけど……どうやらこの裏組織のバックには、レジスタス帝国のさらに上層部、本物の『過激派の皇族』が絡んでいる可能性が高いの」
私はスマホに表示された、暗号化データを解読した新しい仕様書(組織図)をギルバートに見せた。
今回の件で、私たちは目の前のバグ(組織)を物理的に消し飛ばした。だけど、レオの持つ規格外の才能を狙う「世界の大きなバグ(歪み)」は、まだ完全に消え去ったわけではない。
「なるほど……。根っこはまだ深いというわけか。だが、恐れることはない」
ギルバートは私の手を強く握りしめ、不敵に笑った。
「敵がどれほど巨大なシステム(国)であろうと関係ない。お前のその不思議なスマホの技術と、俺の闇、そしてアラカルト公爵家の力があれば――邪魔する壁は、次も正面からすべて叩き潰すだけだ」
「ふふ、そうね! どんな無理難題が来ても、この最強の家族(過保護ネットワーク)で全員一丸となって、笑顔でリリース(大勝利)してみせるわ!」
ベッドの中でスースーと気持ちよさそうに眠るレオの寝顔を見つめながら、私は新しくバージョンアップしたスマホを握りしめ、未来への確かな闘志を燃やすのだった。




