第49話:帝国の地下迷宮へ! 容赦なき過保護の総力侵攻戦
ドゴォォォォォン!!!
「な、何事だ!? 敵襲――がはっ!?」
レジスタス帝国の国境付近、その地下に隠されていた裏組織の総本山。その頑丈な鉄魔導の総門が、跡形もなく内側へと吹き飛んだ。
爆煙の中から姿を現したのは、他国の軍勢を圧倒するオーラを放つ、私たち「アラカルト公爵領・特設デバッグ騎士団」の面々だった。
「よし、マップのピン通り、ここがバグの拠点で間違いないわね!」
私は『異世界スマホ』の広域レーダーで地下迷宮の構造を確認しながら、最前線に立っていた。
背中には本来の翼を大きく広げた、数メートル級の聖獣姿のラン。そのランの背の特等席には、お母様にガッチリと抱っこされたレオが「あうー!」と元気に出撃の声をあげている。
「ユキ、俺の後ろにいろと言っただろう。……だが、お前がその気なら、このエリアの障害物をすべて一瞬で消去(物理デリート)するまでだ」
隣を歩くギルバートがアメジストの瞳を獰猛に光らせ、剣を抜く。彼の影から溢れ出たドロドロとした闇の津波が、通路の左右から飛び出してきた裏組織の戦闘員たちを、悲鳴をあげる暇さえ与えず一瞬で壁ごと飲み込んでいった。
「ひ、ひぃぃ! 侵入者だ! 罠を起動しろ! ゴーレム部隊、前へ!」
迷宮の奥から、数型もの重装ゴーレムと、天井から降り注ぐ無数の毒矢のトラップが襲いかかる。
並の軍勢ならここで足止めを喰らうだろうが、今の私たちは「我が子を狙われてブチ切れた過保護の塊」だ。
「そんな小細工、私のフルパワーで叩き潰すわ! ――『聖女の超・物理ギロチンバリア』!!」
私が両手を鋭く振り下ろすと、空間に生成されたギロチンの刃のような、超巨大で超高密度の物理バリアが、凄まじい質量と速度で前方の通路をまっすぐに滑走していった。
ガガガガガガガガッ!!! ズドォォォォォン!!!
襲い来る毒矢を火花に変えて弾き飛ばし、立ちふさがる重装ゴーレムたちを大根のように真っ二つに押し潰しながら、バリアの壁が通路を強引に「更地」へと開拓していく。元システムエンジニアの容赦ない一括削除だ。
「素晴らしいわ、ユキ! お母様も負けていられませんわね。――これでも喰らいなさい!」
お母様が片手をかざすと、実家の商会が誇る最高級の爆裂魔導具が、惜しげもなく通路の奥へとガトリングガンのごとく連射された。
ドバババババ爆発する迷宮。もはや暗殺組織のアジトというより、ただの更地開拓現場である。
「よし、前衛の防衛ラインは壊滅したな。ユキ、ラン、一気に最奥のコアへ突入するぞ!」
お父様が魔導杖で進路を示すと、ランが「我に遅れるなよ!」と吠え、強烈な烈風を巻き起こしながら地下通路を爆走した。
左右の部屋から慌てて飛び出してくる敵の魔導師たちを、ランはその巨大な神聖な翼の一振りで文字通りゴミのように壁へと叩きつけていく。
「待って、ギルバート! 最奥の扉の向こうに、この裏組織のリーダー(黒幕)の生体反応があるわ。……だけど、何かしようとしてる!」
スマホのレーダーを見つめる私の目に、扉の向こうで急速に高まる不気味な魔力のログが映った。
「フハハハ……! 来たな、アラカルト家の化け物どもめ! だがもう遅い! この最奥の部屋にある古代の魔力増幅炉を暴走させ、この地下迷宮ごと、貴様らを木っ端微塵に――」
扉の向こうから響く、黒幕の往生際の悪い叫び。
どうやら、勝てないと悟って自爆システムを起動させたらしい。
「自爆なんて、そんなベタな仕様、元SEが許すわけないでしょ……!」
私はランの背から飛び降り、最奥の巨大な鉄扉の前に着地した。
スマホを構える。いや、今回はハッキング(データ戦)の処理を待つ時間すら惜しい。理屈が通じないなら、聖女の圧倒的なパワーで仕様変更(物理破壊)をかけるまでだ。
「ギルバート、ラン、お父様! 私の背後に最大の防御バリアを張って!」
「了解した!」
「うむ!」
『任せよ、主!』
2人と1匹の最大出力の防御結界が、私の背後と、レオを守るように何重にも展開される。
それを確認した私は、両手にこれまでの人生で最大級の、太陽のようにまばゆい純白の聖魔力を凝縮させた。部屋全体の空気が、その圧倒的な光の質量でビリビリと震え、パキパキと空間に亀裂が入る。
「自爆のカウントダウンが始まる前に――その部屋ごと、消し飛びなさい!! ――『聖光・極大消滅砲』――ッッ!!!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォッッ!!!!
私の両手から放たれた、太い柱のような超巨大な聖光のレーダー照射(攻撃魔法)が、最奥の頑丈な鉄扉を、そしてその向こうにあった自爆装置もろとも、黒幕の男を正面から完全に飲み込んだ。
地下迷宮の最深部が、まるで昼間のような純白の光で満たされ、大爆発の轟音が鳴り響く――。




