第47話:母は強し! 聖女の物理バリアと特大の光弾魔法
ドゴォォォォォン!!!
私のスマホから放たれたカウンターの光撃が、超高速の暗殺者を正面から捉え、庭園の木々を何本もなぎ倒しながら吹き飛ばした。
「やった……っ!?」
だが、煙の向こうから現れた男は、ボロボロになりながらも、その手に奇妙なクリスタルを握りしめて不気味に笑っていた。
「ククク……噂通りの凄まじい威力。だが、これで貴様の『魔導の波長』はすべてこのクリスタルが記録した! 我が組織の術式解体師たちが、このデータを元に、次こそ貴様の魔力を完全に無力化する呪詛を――」
男がそこまで言いかけた、まさにその時。
私の胸の奥で、カチン、と何かが切れる音がした。
「データだの、解析だの、波長だの……。さっきから聞いていれば、理屈ばっかりで本当にうるさいわね……っ!!」
私はスマホをポケットに突っ込み、レジャーシートを力強く蹴って前に進み出た。
徹夜のデバッグで頭が痛い上に、大切な家族の団らんをバグまみれの男に邪魔されたのだ。元OLの、そして一児の母としての怒りは、とっくに限界数値をオーバーフローしていた。
「データさえ取れば勝てると思ってんじゃないわよ。――なめるな、この元デスマーチ要員を!!」
私の身体から、これまでにないほど狂暴でまばゆい純白の聖魔力が、文字通りドォォォォォン!!! と滝のように噴き上がった。その圧倒的な光の圧力だけで、周囲の霧や男の持っていた気配隠蔽の魔導具が、バリバリと音を立てて粉砕されていく。
「な、何だこの常軌を逸した魔力量は……!? 貴様、ただの魔導具使い(エンジニア)では――」
「ギルバート、ラン、お父様! 手出し無用! このバグは、私が直接、物理的にスクラップにしてやるわ!!」
私が両手を前に突き出すと、空間に巨大な、本当に巨大な、厚さ数メートルはあろうかという純白の『物理防御バリア』が展開された。
「くらえ、聖女特製・超高密度物理圧縮バリアアタック――ッ!!」
私が腕を思い切り振るうと、その巨大なバリアの壁が、時速数百キロの猛スピードで男に向けて水平にすっ飛んでいった。防御魔法を、そのまま巨大な質量兵器として質量攻撃(物理)に変えたのだ。
「が、はっ……!? ぐあぁぁぁぁぁッ!!」
防壁という名の「光のトラック」に正面から撥ね飛ばされた暗殺者の男は、クリスタルごと地面を何十メートルもバウンドしながら転がっていく。骨がボキボキと折れる鈍い音が響いた。
「ま、待て……! 聖女とは、慈悲の心を持つものでは――」
「バグに与える慈悲のコードなんて、最初から実装してないのよ!」
私はさらに両手を天にかざした。
私の周囲に、ラグビーボール大の、超高密度に圧縮された純白の光弾魔法が、10個、20個、50個……と、まるであらゆる方向を埋め尽くすミサイルランチャーのように次々と生成されていく。
「レオの未来を邪魔する悪い裏組織は――一発残らず、消し飛びなさい!!」
ドバババババババババババババババッッ!!!!
私が手を手前に振り下ろした瞬間、無数の特大光弾が、逃げ惑う暗殺者に向けて容赦なく連射された。
庭園の地面が激しく爆発し、大地がガタガタと震える。もはや爆撃地帯と化した煙の向こうで、暗殺者は自慢の超高速を活かす暇さえなく、四方八方からの光の爆辞(物理)にひたすらボコボコにされ、悲鳴をあげることしかできていなかった。
「ふぅ……はぁ……。よし、デバッグ完了!!」
最後の特大光弾が着弾し、激しい爆風が収まった頃。
そこには、巨大なクレーターの真ん中で、完全に白目をむいてピクピクと震えている哀れな暗殺者の姿(と、粉々に砕け散ったデータクリスタル)があった。
「……すごいわ、ユキ! 我が娘ながら、あの素晴らしい破壊力、惚れ惚れしてしまうわ!」
お母様がパチパチと嬉しそうに拍手を送り、お父様は「うむ、我がアラカルト家の物理教育の賜物だな」と深く頷いている。
「……ユキ。お前がそんなにアクティブに戦う姿を見るのは久しぶりだが、……最高にカッコよくて、さらに惚れ直してしまった」
ギルバートが、少し頬を赤くしながら、私の肩を優しく抱きすくめてくれた。彼が闇魔術を出すまでもなかった。
『ふん……。主よ、お前が最初からそのゴリ押し魔法を使っていれば、昨日の砦も5分で消し飛んでいたのではないか?』
ランが呆れたようにため息をつきつつも、レオと一緒に「キャッキャ!」と私の大無双を褒めるように尻尾を振っていた。
「あはは、やっぱりエンジニアでも、たまには身体を動かして正面からぶっ飛ばすのが一番のストレス発散ね!」
腕の中のレオを抱き上げ、私はスカッとした笑顔で青空を見上げた。
裏組織がどんなに姑息なデータ戦を仕掛けてこようと関係ない。データが通じないなら、聖女のフルパワーで物理的に粉砕するだけ。




