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王子の心を溶かすのは・・・?〜孤独だった元OL、異世界で最強聖女になって公爵家に溺愛され、呪われた不器用王子を無自覚に救っちゃいました〜  作者: S@Y@


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第43話:極限の30秒! 抽出コード強制遮断(ハッキング・ブレイク)


「グガァァァァァッ!!」


レオの聖魔力を吸い上げて駆動する古代の超大型魔導ゴーレムが、怒号のような駆動音を響かせて暴れる。

それを力ずくで押さえ込むギルバートの闇の鎖が、過負荷でパチパチと悲鳴をあげていた。ランの神聖な爪も、ゴーレムの圧倒的な質量の前にギリギリと押し戻されそうになっている。


「残り、20秒……ッ!」


ギルバートが美しい顔を歪め、奥歯を噛み締めながら叫ぶ。彼の身体にも、ゴーレムが放つ魔術相殺の波動がダイレクトに跳ね返り、凄まじい負荷がかかっているはずだ。


「分かってる! あと少し……あと少しで繋がる……!」


私の視界(スマホの画面)には、敵の天才術式解体師が構築した『魔力抽出プログラム』の、複雑怪奇な数式配列が文字通り滝のように流れ落ちていた。


敵のコードは完璧に見えた。こちらのスマホからの外部アクセスをすべて「不正なパケット」として自動で弾くセキュリティが何重にも組まれている。


(普通にハッキングしようとしても、アクセス権限がないから絶対に弾かれる。なら……まともに認証を通すのは諦める!)


前世のブラック企業で、数々のバグまみれのレガシーシステムと戦ってきた私の経験が、ひとつの「禁手」を導き出す。


(認証システムそのものをハックするんじゃない。レオとゴーレムの間を流れる『魔力のデータ量』そのものを、システムが処理しきれないレベルまで一時的に大爆発オーバーフローさせて、防衛システムごとエラー落ちさせてやるわ……!)


私は手元に残っていた、知育カードの通信ログをすべて書き換えた。

カードの条件分岐(if文)を「無限ループ」に設定し、レオの持つ魔力センサーに向けて、1秒間に数百万回もの「マッチング要求」を送りつける。


「処理しきれないほどの超巨大ダミーデータ(バグ)を送り込んであげる……! 喰らいなさい、バッファオーバーフロー・アタック!!」


私がスマホの画面を強く叩いた瞬間、通信ログを通じて、目に見えない魔術データの濁流が魔法陣へと一気に流れ込んだ。


ピキピキピキピキピキィィィィィィン!!!


不気味に明滅していた魔法陣が、一瞬で見たこともないほど真っ赤なエラー光に染まる。


「な、何だと……っ!? 魔力抽出の術式が……命令を処理しきれずにフリーズしているだと……!?」


術式解体師の男が、顔を真っ青にして数歩よろめいた。


【――警告:システム過負荷。処理許容量を超過しました。安全装置セーフティを作動し、魔力供給ラインを強制切断ディスコネクトします――】


スマホから冷徹なシステムログが出力された瞬間、レオの身体から伸びていた純白のラインが、プツンと音を立てて完全に遮断された。


「ガ、ガガ……ギギ……」


動力源(燃料)を完全に失った大型ゴーレムの、両目の赤い光がすうっと消えていく。見上げるほどの巨躯が、ただの動かない石と鉄の塊へと戻った。


「――10秒、残したな。よくやった、ユキ」


ゴーレムが完全に機能停止したその刹那、ギルバートが冷酷な笑みを浮かべて地を蹴った。

彼の身体から解き放たれた闇の刃が、無防備になったゴーレムの巨躯を十文字に切り裂き、木っ端微塵に粉砕する。


ドガァァァァァァン!!!


「ひっ、ひぃぃぃ……ッ! 化け物め……っ!」


腰を抜かして床にへたり込む術式解体師の男。その首元に、ギルバートの漆黒の剣先がピタリと突きつけられた。


「我が子を奪い、妻を泣かせた罪だ。大人しく一瞬で死ねると思うなよ」


「ま、待て……! 俺を殺しても無駄だ……! 我が『裏組織』の計画は、まだ始まったばかり……。お前たちの子供が持つ『規格外の魔力ソース』は、いずれ世界の仕組みを書き換えるために、必ず我が主が――」


男が不気味な負け惜しみを叫びかけたその時、ランが背後から「うるさいわ!」とばかりに、巨大な前足で男を床ごとドスンと踏みつぶした。気を失った男の周囲に闇の結界が張られ、一瞬で完全拘束ざまぁされる。


「レオ――ッ!!」


私は魔法陣の中に駆け込み、ようやく解放された愛しい我が子を、これ以上ないほど強く腕の中に抱きしめた。


「あう……ばぶぅ……っ、うあー!」


私の胸の温もりを感じたのか、レオがちっちゃなおててを伸ばし、私の頬をペシペシと叩きながら、いつもの元気な声で泣き出した。


「よかった……っ、本当によかった……! 怖かったよね、ごめんね、レオ……っ」


涙がボロボロと溢れて止まらない。そんな私とレオを、ゴーレムの破片を払いのけたギルバートが、長い腕で包み込むようにまとめて抱きしめてくれた。


「ユキ、レオ……。無事で、本当に良かった……。俺のすべてを賭けて、二人を連れて帰ろう」


『ふん、我の活躍も忘れるなよ? さあ、こんな不気味な砦は早くおさらばだ。我が背に乗るが良い』


本来の神聖な姿のまま、ランが優しく鼻先を寄せてくる。

こうして、他国の裏組織による周到な誘拐事件は、元OLの泥臭いシステムエンジニアの意地と、家族の絆によって無事に解決された。


だが、男が最後に言い残した『裏組織』の影――。

レオの持つ圧倒的な才能を狙う脅威が、この世界のどこかにまだ潜んでいる。私たちの「最強のハッキング育児ライフ」は、彼らとの長期的なデバッグ(戦い)という、新たな火種を抱えながら進んでいくことになるのだった。


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