表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子の心を溶かすのは・・・?〜孤独だった元OL、異世界で最強聖女になって公爵家に溺愛され、呪われた不器用王子を無自覚に救っちゃいました〜  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/71

第39話:泥臭いデバッグの夜! 偽装ログを1行ずつ剥ぎ取れ


「……くそっ、またここでエラーになる……っ」


王宮の寝室には、何十枚もの羊皮紙が散乱し、そのすべてに私がスマホの画面からノートに書き写した、不気味な黒い魔術コードがびっしりと並んでいた。

夜が明けても、私は一睡もせずに『異世界スマホ』の画面をフリックし続けている。


画面には【解析進捗:12%】の文字。

いつもなら一瞬で終わるスキャンが、信じられないほど遅い。敵の仕込んだウイルス(呪詛)は、まるでタマネギの皮のように、解析しようとするたびに新しい暗号の層が現れる、とてつもなく厄介な構造をしていた。


「ユキ、少し休め。お前の魔力残量が、さっきから危険な領域に入っている」


ギルバートが、痛々しそうに眉を寄せて私の肩を抱きすくめてくる。彼の美しい金髪は少し乱れ、眼帯の外れたアメジストの瞳には、レオを奪った敵への底知れない怒りと、私を倒れさせまいとする必死の光が混ざり合っていた。


「休めないよ、ギルバート……。だって、1分遅れるごとに、レオがどこに連れていかれるか分からなくなる。……あいつら、私のスマホの特性を完全に研究してる。位置情報(GPS)のログが、3秒ごとに東の砂漠と西の渓谷を交互に指し示すようにループ処理されてるの。どっちもフェイクよ」


カチカチと指先から火花のような聖魔力を流し込み、ウイルスのコードを直接解体していく。だが、数行を書き換えた瞬間、スマホが『ピピピピッ!』と甲高いエラー音を鳴らし、画面が真っ赤に染まった。


「しまっ……! トラップバグを踏んだ……っ。解析ログが強制リセットされた……!」


「ユキ!」


目の前が真っ白になり、脳が焼き切れるような疲労感で視界がぐらりと揺れる。

前世のブラック企業で、納期前日に予期せぬ重大エラーを突きつけられたあの絶望感。いや、それ以上だ。自分の知識が、愛する我が子を助けるための唯一の武器なのに、それが敵の高度なカウンターに阻まれて届かない。


『主よ、弱気になるな。我の魔力を回路の身代わりに使え』


足元で、まだ敵の仕掛けた拘束術式の残滓に苦しんでいたはずのランが、よろよろと立ち上がった。

子犬の姿のままだが、その瞳には聖獣としての誇りがぎらぎらと燃えている。


『あの泥棒どもめ、我の固有魔力を偽装の燃料に使いおったな。ならば、その偽装の「癖」を我が内側から逆探知してやる。主よ、我の魂を直接お前のスマホに同期プラグインしろ!』


「ラン……! でも、そんなことをしたら、ランの負担が――」


『舐めるな。我をただの愛玩犬だと思うてか! 行くぞ、主!』


ランが鋭く吠えた瞬間、彼の小さな身体から、透き通るような純白の魔力ラインが伸び、私のスマホへと直接吸い込まれていった。


ジジジジジ……ッ!!!


スマホの画面が激しく明滅し、ランの聖獣としての膨大な魔力情報が、ウイルスの暗号を凄まじい勢いで中和し始める。


「画面のノイズが消えていく……! すごいよ、ラン! 敵の暗号化キーのマスターデータが見えた!」


私はすぐさま魔導入力盤を叩き、トラップを回避しながら、ウイルスの核心部へと文字通り「力技」で突入していった。


(冗長なフェイクログの全消去! ランの魔力をナビゲーションのブースターに固定! 本物の現在地を割り出せ……ッ!!)


画面のマップが一瞬、激しくブレた後――世界地図の北端、我が国と他国の国境に広がる『迷宮の森』の、とある古い砦の座標に、ピキィィィィィィン! と一本の確かな光のピンが突き刺さった。


「見つけた……! 国境の『黒き霧の砦』。レオは、そこにいる!」


「……よくやった、ユキ、ラン。場所さえ掴めば、あとは俺たちの番だ」


ギルバートが静かに立ち上がると、王宮の床がミシミシと鳴り、彼の影から無数の闇の触手が狂暴に蠢き始めた。


「ただし、敵もこちらの追跡を予期しているはずだ。あの森は元々、強力な野生の魔獣たちが巣食う危険地帯。そこに砦を構えているということは、無数の防衛術式と魔獣の軍勢を配置して、俺たちを迎え撃つ算段だろうな」


「望むところよ。一瞬で終わるデバッグじゃないなら、正面から1システムずつ、確実に叩き潰して進むだけ。レオ、待ってて……ママとパパが、今すぐ助けに行くからね……っ!」


徹夜のデバッグを終え、ボロボロになりながらも、私たちの瞳には確かな反撃の炎が灯っていた。大切な我が子を取り戻すための、長く過酷な「砦攻略戦」の幕が、今上がろうとしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ