表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二度目の春に、あなたを選ぶ  作者: FDケンジ
34/46

第33話 作戦会議

昼休み。


亜里沙、千鶴、舞、三人は、例の空き教室へと向かっていた。


「ねえ、この教室、勝手に使っちゃって大丈夫なの?」


亜里沙が心配そうに聞いた。そこは、いつか蓮司くんが皆を招き入れた、あの特別な部屋だった。


「蓮司くんの許可、いるんじゃ……」


「大丈夫ですわ。蓮司様からは、好きに使っていいと言われていますの」


千鶴ちゃんが、涼しい顔で答えた。


そこへ、千夏ちゃんと結衣ちゃんが弁当を抱えて合流した。


「そうそう。ただ、ここに来るまでの道中だけ気をつけてね。私たち、一緒にいるとかなり目立っちゃうから」


それを聞いて、亜里沙は妙に納得してしまった。


(……そう言われてみれば)


学校でも指折りの美少女たちが、ぞろぞろと連れ立って歩いているのだ。目立たないわけがない。


ほどなくして、冴子さんもやってきた。六人で机を寄せ合い、弁当を広げる。話題は、自然と今朝の出来事──月島さんが蓮司くんに話しかけてきた一件に移っていった。


「あの子のこと、私も見たわ」


冴子さんが、思い出したように口を開いた。


「昨日、廊下を走らないように注意した子なの。その後、蓮司くんと合流したから……たぶん、その子かしらね」


「とうとう、学校での蓮司くんに好意を持つ女の子が現れた、ってわけだね」


結衣ちゃんが、にやりと笑う。


「蓮司くんの変装って言っても、髪を伸ばして眼鏡をかけてるだけですもの。真正面から関わってしまうと、彼の魅力に気づいてしまうのかもしれませんわね」


冴子さんが、静かに言った。


「そうだよね。でも、おかしくない? ありさの聞いた様子だと、蓮司くんのほうも優しくしてたように聞こえるけど」


結衣ちゃんが、首を傾げる。


「地味な子だったよね、その子。蓮司くんも、誰彼構わず関わったりはしないはずだけど……」


「あの子のことなら、私も少し見ましたわ」


千鶴ちゃんが、口を開いた。


「制服は大きめに着ていて、髪はぼさぼさでしたわね。自信なさそうな子で……正直、あまり蓮司様と釣り合う方には見えませんでしたけど」


その辛辣な一言に、亜里沙は驚いた。お嬢様で、いつもおっとりしている千鶴ちゃんが、こんな辛口を言うなんて。


「千鶴ちゃんも、そういうこと言うんだね。なんか、意外」


亜里沙が言うと、千鶴ちゃんは少し肩をすくめた。


「あら。私も、自分の心が綺麗だとは思っておりませんわよ。特に……蓮司様のことに関しては、妥協は許しませんもの」


にっこり笑う千鶴ちゃんに、亜里沙は苦笑した。


「で、今日その子と蓮司くんが行くお店、わかるの?」


冴子さんが聞くと、舞が首を振った。


「どのお店かは、おっしゃっていませんでしたね」


「私もこのへんのお店は知ってるけど、どこのカフェかまでは……」


亜里沙も眉を寄せる。


「そう。でしたら、直接聞きましょう」


冴子さんが、あっさりと言った。


「え、平気なの?」


亜里沙が驚くと、結衣ちゃんがスマホを掲げた。


「あ、ちょうどメール来たよ。『クラスの女の子と放課後に出かけることになったから、家に帰るの遅くなる』って」


「それ、わざわざ伝えてくるんだ……。家に帰るの遅くなるって、報告する必要ある?」


亜里沙が目を丸くすると、冴子さんが頷いた。


「あるわよ。私たち、ちょくちょく学校帰りに彼の家に行ってるもの。それに、私たちの中で隠し事はしない。もう当然のことだから、こういう時は普通に聞けばいいのよ」


「なんだか……よくドラマで見てた恋愛と、違うんですね」


千夏が、感心したように呟いた。


「もっと、ドロドロしたものかと思ってました」


「普通はそうですわね」


千鶴ちゃんが、柔らかく言った。


「でも、それはほとんど、男性の態度が悪い場合ですわ。こそこそ隠れて他の女性に会いに行くような殿方を、信頼などできませんもの」


「そうだよね」


結衣ちゃんが頷く。


「女の子からしたら、捨てられるんじゃないかって不安になっちゃうからね。まあ、そんな男、こっちから願い下げだけど」


「いや、普通にこういう関係が成り立つの、蓮司くんだからじゃないですか」


千夏が、ぽつりと言った。


「それはそう」


結衣ちゃんが、即座に頷いた。


それから、ぱっと顔を上げる。


「あ、シエラちゃんも来るって!」


「シエラちゃん、来られるんですね」


舞が嬉しそうに言った。


「学年が違うと、やっぱり寂しいですね」


「そうね。来年にはこっちに来られるけど……ちょっと心配なところもあるのよね」


冴子さんが、ため息混じりに言う。


「何がですか?」


亜里沙が聞くと、


「シエラちゃん、可愛いから。この学校に来たら、有名にはなるでしょうけど」


「いえ、そうじゃなくて」


冴子さんが、苦笑した。


「あの子ね……蓮司くんに、よく抱きつくのよ。今までは学校が離れてたから良かったけど、さすがに、教室が分かれる程度で我慢できるか、心配なのよ」


「それ、わかる」


結衣ちゃんが、深く頷いた。


「私だって、廊下ですれ違う時に、手で触れ合う程度で我慢してるっていうのに。シエラちゃんは、難しそうだよね」


その一言に、亜里沙、舞、千夏が、ぱちくりと目を瞬かせた。千鶴ちゃんも、少し驚いている。冴子さんは、呆れたように額を押さえた。


「……そんなこと、してたんだ」


亜里沙が呟くと、千夏が、はっと何かを思い出したように言った。


「あ、そういえば。この前、蓮司くんが通りかかった時に、結衣さんが転んで、抱きかかえられてましたけど……あれ、もしかして、わざとですか?」


「そうだよ」


結衣ちゃんが、悪びれもせず笑った。


「結構自然だったでしょ? あの時ね、首にキスもできたんだよ。すごいでしょ」


「ずるいですわ! そんなのありなら、私だって……!」


千鶴ちゃんが、頬を膨らませる。


「二人とも、落ち着きなさい」


冴子さんが、ぴしゃりと言った。


「蓮司くんの迷惑になることは控えるように、と言ったはずよ」


「なんだか……禁断の恋って感じで、羨ましいです」


千夏が、うっとりと呟いた。


「そうでしょう?」


結衣ちゃんが、得意げに笑う。


「こういうのも、案外スパイスになるのよ。会えない分、燃え上がるっていうか。……そういう日の夜は、すごいんだから」


千夏と舞が、揃って顔を赤らめ、ごくりと喉を鳴らした。


その様子を眺めながら、亜里沙は、しみじみと思う。


(……この人たち、本当に、彼との恋愛を楽しんでるんだなあ)


「はい、話を戻すわよ」


冴子さんが、ぱんと手を叩いた。


「むむむ……」


まだ何か言いたげな千鶴ちゃんに、冴子さんは小さく息をついて、声をかけた。


「千鶴ちゃんも、すねないの。後で、蓮司くんと学校でも関われるように手配しておくから」


「冴子さん、本当ですか!? ありがとうございます!」


千鶴ちゃんが、ぱっと顔を輝かせる。


その横で、千夏が何か言いかけて……結局、口をつぐんだ。


「さっきの話に戻りますけど」


冴子さんが続けた。


「蓮司くんも、まだ場所はわからないそうよ。お店に着いたら教えてくれるそうだから……まずはシエラちゃんと合流して、その後で向かいましょう」


「大丈夫なんですか?」


舞が、少し不安そうに聞く。


「例の女の子に気づかれなければ、問題ないわ」


「冴子先輩は、生徒会のお仕事とか

大丈夫なんですか?」


亜里沙が聞くと、冴子さんは平然と答えた。


「大丈夫よ。私は主に指示を出すばかりで、書類仕事は三年の先輩にやらせてるから」


「人を使うのが、お上手なのですね」


舞が感心すると、


「そんなことないわよ。頼めば何でもやってくれるから」


「案外、ひどいですね……」


亜里沙が苦笑すると、冴子さんは、ふっと笑った。


「そんなことないわよ。はっきり言えば、やめさせたいくらい。あの人、 私に恋愛感情を抱いているの。 でも  一応、生徒会長候補だった人だから。書類仕事で、私に近づかないように抑えてるようなものよ」


「冴子さんも、色々大変ですものね」


千鶴ちゃんが、しみじみと言った。


「本当に、冴子さんと龍二さんのおかげで、私たちも男性に追いかけ回されずに済んでいますし。感謝していますわ」


その一言に、舞、千夏、亜里沙が、また目を丸くした。


「そうだったのですね……」


舞が、納得したように頷く。


「道理で、この学校に転校してきてから、一度も告白されないはずです」


「私もです」


千夏も続く。


「それはね」


結衣ちゃんが、にやりと笑った。


「この学校には、ある噂が流れてるの。……まあ、真実なんだけどね。この学校の美少女に告白しようとすると、怖い龍二お兄さんが会いに来る、っていう」


「龍二さんって……あの、三年の先輩ですよね」


亜里沙が聞くと、舞も頷いた。


「そうでした。千鶴さんを助ける時もいましたけど……あの人、どういう人なんですか?」


「まあ、蓮司くんの部下だけど、私たちの命令も聞いてくれるよ。困ったことがあったら、彼に頼るといい。……冴子さんは、毛嫌いしてるけどね」


「毛嫌いはしていないわ」


冴子さんが、すかさず訂正した。


「ただ、彼は蓮司くんに一番信頼されている人。だからこそ、私は……彼を追い抜きたいのよ」


そう言う冴子さんの瞳には、静かな闘志が宿っていた。


「さあ、もうそろそろ時間ね」


冴子さんが、立ち上がった。


「続きは、また放課後に。──作戦開始よ」


第33話 了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ