沙織の苦労
《サイド:深海優奈》
午前7時を過ぎた頃。
朝食を食べるために悠理ちゃんと二人で食堂に訪れたのですが、
今日もまた食堂を出ようとする先輩達と入れ違いになってしまいました。
「あっ!先輩達!!」
悠理ちゃんの言葉に反応して周囲を確認してみると。
食堂を出ようとする3人の先輩の姿が見えたんです。
翔子先輩と常盤先輩と北条先輩の3人でした。
今日は総魔さんはいないようですね。
…ただ。
いつも思うのですが、
悠理ちゃんは人を見つけるのが上手ですよね?
いつだって私よりも先に気付く悠理ちゃんは、
私なんかよりもずっとずっと勘がいいのかもしれません。
あるいは…まあ、私が鈍いだけなのかもしれませんけど…。
それよりも今は、
少し気になることがありました。
翔子先輩と北条先輩が何となく険悪な雰囲気で口論をしているように見えるからです
そんな二人の間で常盤先輩が仲裁しているようにも見えます。
何かあったのでしょうか?
「おはようございます!!」
「…ん?」
「あら…。」
「おう!」
元気良く挨拶をする悠理ちゃんの声を聞いて私達に気づいてくれた先輩達が足を止めてから私達に振り返ってくれました。
「おはよう、悠理ちゃん。それと優奈ちゃんも。」
優しい笑顔で微笑んでくれたのは常盤先輩です。
「元気にしてるか?」
北条先輩も私達に笑顔を向けてくれました。
そして。
「おはよ~!今日も二人で仲良く朝ご飯?」
翔子先輩も笑顔で私達に声をかけてくれたんです。
「…はい。朝食を食べようと思って来たんですけど…今日も遅かったみたいですね。」
「あははっ。そうみたいね〜。」
「えっと、今日は3人でどこかに行くんですか?」
先輩達が3人一緒に行動していたので、
何となく聞いてみただけなのですが…。
「「………。」」
何故か翔子先輩と北条先輩は再び険悪な雰囲気に戻ってしまいました。
喧嘩というほどではないのですが、
ピリピリとした重い空気が漂っているように感じます。
お互いに牽制し合っているような感じでしょうか?
「まあ…ちょっと、ね。」
翔子先輩は言葉を濁していましたが、
代わりに常盤先輩が説明してくれるようです。
「…えっとね。些細なことがきっかけなんだけど、これから二人で試合をすることになったのよ。」
深くため息を吐く常盤先輩の表情には仲裁の苦労が表れているように思えますね。
…ですが。
今はそれよりも気になることがありました。
…翔子先輩と北条先輩が試合を?
そちらの方が気になってしまったんです。
さりげなく悠理ちゃんに視線を向けてみると、
悠理ちゃんも同じように私に視線を向けていました。
そして、こくっと頷きあう私と悠理ちゃん。
考えていることは同じようです。
なので、もう一度先輩達に振り返りました。
「あ、あの…。」
「私達も行って良いですか?」
「ああ、いいぜ!観客は多い方が盛り上がるからな。」
私と悠理ちゃんのお願いに、
北条先輩は笑顔で答えてくれたのですが…。
「ぶざまな姿を見せなければいいんだけどね~。」
「…ああ!?」
翔子先輩の言葉が気に入らなかったのか、
北条先輩は翔子先輩を睨みつけていました。
バチッっと火花が飛ぶんじゃないかと思うくらい、
気合いを込めた目で睨み合っているんです。
…あぅぅぅ。
ちょっぴり怖くなってしまいました。
どうしてこんなふうになってしまったのでしょうか?
「はあ…。」
ため息を吐く常盤先輩は呆れ顔です。
もしかして。
ずっとこんなことが続いていたのでしょうか?
だとしたら。
常盤先輩の苦労が少しだけ分かるような。
そんな気がしました。




