これまでの経験上
《サイド:桐島亮平》
首都イーファから西へと延びる街道を進む。
今回はイーファの西側にある港で船を調達するために移動しているのだが、
その途中でシェリルが大きなため息を吐いていた。
「はあ…。あの馬鹿は、またどこかに行ったけど大丈夫かしら?」
…ははっ。
どうやらシェリルは澤木君のことが気になる様子だな。
現在、澤木君は自由行動が認められたことで別行動をとっているのだが、
そもそも彼は軍にもギルドにも所属していないからな。
いつで自由に行動する権利がある。
…とは言え。
これまでの経験上、
放置しておくと『何を仕出かすか分からない』という不安がシェリルにはあるようだ。
「激しく不安よね…?」
どこかでまた無茶をしてるのではないかと考えているのだろう。
その気持ちは俺も理解できるのだが、
現時点では特に問題など起きていないはずだ。
仮に無茶をしようと考えたところで出来ることは何もないと思っている。
「随分と気にしているな。そんなに彼のことが気になるのか?」
だとすれば共に行動すれば良かったのではないかと思うのだが。
「はあっ!?」
シェリルは不満全開の表情で俺を睨みつけてくる。
「それは、どういう、意味かしら?」
よほど強調したかったのだろうか?
言葉を区切りながら問い返すシェリルだったが、
隣を歩く絵里香は微笑みながら話し掛けていた。
「あらあら?シェリルは彼のことが好…?」
「はぁ!?そんなわけないでしょっ!!」
絵里香の問い掛けを聞き終えるよりも先に即答で否定している。
そのあまりの早さに戸惑ってしまったのか、
珍しく絵里香が笑顔のままで表情を停止させていた。
「す、すごく、早かったですわね…。」
「あのね~!?私は!あの馬鹿が!また周りに!迷惑をかけないかを心配してるだけよっ!勝手なことは言わないで!!」
…うーん。
これはどうなのだろうか?
全力で断言するシェリルの発言が真意であれば、
シェリルの心に澤木君はいないということになってしまう。
…これはさすがに少し可哀相な気がするな。
全力で否定するシェリルを見ていると、
どうしても澤木君が哀れに思えてしまう。
…ふう。
本当に気づかないものなのだろうか?
シェリルの気持ちは知りようもないが、
命を懸けてまでシェリルを守り抜いた澤木君の想いが肝心のシェリルには届いていないらしい。
…鈍いにもほどがあるだろう?
何故、気付かないのか?
少しばかり不満すら感じてしまうものの。
澤木君の想いを勝手に告げるわけにはいかない。
…それに、な。
以前からずっと考えていることがあった。
そしてその考えがどうしても否定できずにいる。
…だが、澤木君の想いを無駄にするわけにはいかないからな。
まずは彼がどう動くかだ。
結果を見定めてからでなければ答えは出せない。
…もうしばらくは様子を見よう。
彼がシェリルに想いを打ち明けるかどうか?
まずはそれを確認してから今度の行動を決めるべきだ。
「ブリッツの港へ急ぐぞ!」
首都イーファの西に存在する港町ブリッツで船を調達するために。
俺達は街道を駆け抜けることにした。




