唯一の協力者
《サイド:倉嶋善治》
時刻は午前8時。
軍議が終わったことで私達は王城を離れることになった。
桐島君や絵里香を含め、
ギルドの魔術師を従える私は300名の仲間を複数の部隊に分けて各港へ派遣する手はずになっている。
「各港に存在する全ての船をデニムの港に集結させるのだ!直ちに各港への移動を開始しろ!」
「「「「「はい!!」」」」」
指示を出したことによってギルドの仲間達は即座に各港への移動を開始してくれた。
そうして全員の移動を見送ってから私も行動しようとしたところで、
見覚えのない数名の少年少女が私達に近づいてきたのだ。
「あ…あの…っ。」
…ん?
彼らは?
突然の来訪者を不審に思ったが、
それは一瞬だけでしかなかった。
緊張した面持ちで歩み寄る少年少女達に見覚えはないが、
彼らが何者なのかは問いかけるまでもないからだ。
…ついに来てくれたのだな。
「待っていたぞ。」
優しく微笑んでみせたことで、
彼等はほっと安堵の息を吐いている。
「えっと。あの…僕達は、その…」
どうやら緊張して上手く話せない様子だな。
ならばこちらから受け入れるだけだ。
「落ち着きなさい。緊張する必要はない。我々はきみ達を歓迎する。」
名前も知らない少年達に微笑んでおく。
彼等が何者で何の目的があるのかなど確認するまでもないからだ。
「良く来てくれた。きみ達の協力に感謝する。」
彼らの目的を察して快く受け入れる。
イーファ内部に潜む唯一の協力者である彼等こそ、
私達が必死に捜し求めていた者達だからだ。
絶望しかない争いを恐れ。
いつ訪れるともしれない死を恐れ。
地獄の日々を堪え凌いできた彼等を拒む理由などどこにもない。
「良く来てくれた。」
「は、はいっ!」
「ああ…来て良かった…。」
何も聞かずに受け入れたことで彼等は喜びの涙を流している。
ようやくたどり着いた心の拠り所だからだろう。
仲間との合流に幸せを感じてくれたのか、
誰もが私に頭を下げてくれていた。
「「「「「ありがとうございますっ!」」」」」
…ははっ。
元気な子達だな。
絶望からの脱出か?
あるいは未来への希望と言うべきか?
彼等は率先して私達に協力を申し出てきた。
「僕達も戦います!もう逃げるのは嫌だからっ!もう誰も失いたくないからっ!だから、だから僕達にも手伝わせてくださいっ!!」
…ああ、もちろんだ。
少年達の想いを受け取って願いを聞き入れる。
「これから私達は最後の戦いに向かうつもりだ。」
この戦いを乗り越えた先に真の平和があるはず。
「だからこそきみ達の力を貸してほしい。」
「「「「「はいっ!!」」」」」
私の許可を得たことで少年達も戦争へ参加することになったのだが、
彼等の後方からはさらなる人物が続々と集まろうとしている姿が見えた。
…そうか。
こんなにも来てくれていたのか。
ずっと願っていた出来事だった。
この瞬間の訪れに泣き出してしまいそうな想いを感じてしまうほどに。
…ずっとこの日を待っていたのだ。
ギルド長に就任した時から今日に至るまで、
ずっと願い続けていた瞬間だった。
…分かるか、澤木君?
これはきみが起こしたのだ。
…この奇跡を。
…この幸運を。
きみが導いてくれたのだ。
たった一人で国と戦った英雄である澤木君の存在に導かれて、
数え切れないほどの仲間達が集まってくれている。
…これはきみが起こした奇跡なのだ。
魔術師としての名を広めて力を示し、
命を懸けた澤木君の願いによって奇跡の瞬間は訪れた。
「…みな、良く来てくれたな。」
視界に映る多くの仲間達を眺めながら、
全ての者達を受け入れる。
「良く来てくれたっ!きみ達の協力に感謝する!!」
新たに集まった者達を含めて総勢で100名を越える協力者。
彼等こそが私達にとっての希望であり、
長年待ち望んでいた者達でもあった。
「ありがとう…。」
感謝の想いを抱く私に多くの者達が頭を下げてくれている。
「俺達も協力します!」
「私達にも戦わせてくださいっ。」
「もう逃げるのは嫌だっ!」
「僕も戦います!!」
「もう…っ。もう…っ!!誰かを失うのは嫌なんです…っ!!」
…ああ、そうだな。
それぞれが心に秘める想いを受け取って、
新たな仲間達に心から感謝した。
「きみ達の協力に感謝する。」
その一言と共に溢れる涙。
今日という日に感謝して。
集まってくれた者達に感謝して。
澤木君にも感謝しつつ。
この瞬間の訪れを心から喜んだ。
…ずっとこの日を待っていたのだ。
これでもう、思い残すことは何もない。
イーファが落ちたことで姿を見せた仲間達。
彼等は魔力を宿す者達だ。
魔術師狩りの脅威から逃れて姿を隠していた仲間達の訪れを快く受け入れる。
「…良く来てくれたな。」
首都撹乱作戦におけるもう一つの目的であった『魔術師の召集』というもう一つの作戦が、
今この瞬間に達成されたのだ。




