微妙に重い
小さな音を立てながらゆっくりと開かれた扉の奥から未来とあずさが帰ってきたわ。
「…きっつい!!」
「…ですぅ。」
…でしょうね~。
見ればわかるわ。
…って!?
辛そうな表情の未来と笑顔が失われていたあずさは、
控室に戻ってからすぐに力尽きて倒れてしまったのよ。
「ちょっ!?未来!?あずさ!?」
慌てて二人に駆け寄る。
「しっかりしてっ!!」
大きな声で呼びかけてみたんだけど。
意識を失っている二人は床に倒れたまま微動だにしない。
…こういう時ってどうすればいいの?
二人をゆさぶりながら声をかけてみるけど。
それでも二人は目覚めないのよ。
「と、とりあえずベッドにっ!」
「だったら、あずさは私が運ぶわ。」
二人を運ぼうとしたところで、
彩花が率先してあずさの体を抱き起こしてくれたのよ。
…おぉ~。
自分から手を貸すなんて珍しいわね。
なんて思いながら、
未来に視線を戻してみる。
「それじゃあ、私は未来を…って?えぇ~?」
両手に力を込めて未来を起こそうとした瞬間にね。
どうして彩花があずさを回収したのかが理解できてしまったのよ。
「お、重…っ!?」
思っていたよりも重かったの。
見た感じだと私とそんなに変わらない気がするのに、
未来の体を持ち上げるだけで苦戦してしまったわ。
…だから彩花は未来を放置してあずさを選んだのね。
ちょっぴりずるいって思うけれど。
今更、文句は言えないわ。
「くっ。まさか未来が太ってるなんて…」
今まで考えてもいなかったんだけど。
こうなったら気合で運ぶしかないわよね。
…はぁ。
私って速度重視で腕力は平均だから、
こういう時に困るのよね〜。
いっそ引きずっていったほうが楽かも?って、
考えたところで奈々香が手を貸してくれたのよ。
「…私も手伝います。」
「あ、うん。ありがと〜。」
未来の体に手を伸ばした奈々香と協力して未来の体を起こしてみる。
意識を失った未来の両側を二人で支え合いながら、
『微妙に重い』未来をベッドへと運ぶことにしたのよ。
その移動の途中で、
すでにあずさを運び終えた様子の彩花が私達に微笑みを向けているのが見えたわ。
「ふふっ。また太ったんじゃない?」
…みたいね。
もちろん『私が』じゃなくて、
『未来が』太ったという意味よ。
「推定で私や乃絵瑠よりも『+4キロ』というところかしら?」
…あ~、そんな気がするかも。
数日前と比べても軽く『1キロ増』っていうことよ。
…って言うか。
未来って私達が知らない間に間食でもしてるの?
いつも見てるわけじゃないから実際にどうなのかは分からないけれど。
間違いなく体重が増えてると思うわ。
「…で?彩花は手伝ってくれないの?」
「え?嫌よ。あずさを運んで疲れたわ。」
…ええ〜〜〜?
全く疲れてるようには見えないんだけど?
…でも。
二人がかりで未来を運んでる私達と違って、
彩花は一人であずさを運んだのよね?
その差を考慮すれば、
より苦労しているのは明らかに彩花だったわ。
…はぁ。
何も言えなくなって黙り込んでしまう。
…まあ、いっか。
奈々香と二人でさっさと未来をベッドに運ぶことにしたのよ。
そのあとで彩花を含んだ3人がかりで、
未来とあずさの治療を始めたわ。
…だけどね〜。
出来ることは限られているのよ。
「今更だけど、私達って未来が倒れると治療系の魔術ってほとんど使えないわよね。」
回復担当の未来が倒れている現状だと、
せいぜい傷の手当程度しか出来ないのよ。
「…それでも大丈夫だと思います。」
「そうなの?」
「…はい。」
静かな声で囁く奈々香が言うには、
未来もあずさも大きな怪我を負っているようには見えないみたい。
「…軽度の治療で十分です。」
…ふ~ん。
私には分からないけれど。
ひとまず奈々香の判断を信じることにしたわ。
「まあ、最悪でも上にいる研究所の人達に頼めば何とかなるはずよね。」
いざとなれば救援を頼めば済む話なのよ。
だから今は彩花と奈々香に並んで二人の治療を続けたわ。




