その身を地獄に落としまで
杞憂さんが国家再編成による3ヵ国同盟の成立の目的と内容を説明してくれた。
だけど僕にはあまりにも壮大な計画だったからね。
本当に実現できるのかどうか、
純粋に疑問を感じてしまう。
「本当に出来るのでしょうか?」
信じられないというよりは、
不安を感じて問いかけてみたんだけど。
「出来るか出来ないかではない。我々の手で実現するのだ。」
杞憂さんは自信をもって断言していた。
…うーん。
鉄のような意志の強さを感じる瞬間だったね。
…すごいな。
杞憂さんから放たれる覇気とも呼べるような威圧感に体が震えるような迫力を感じてしまうんだ。
…この人は凄い。
今なら分かる気がする。
岡田さんが杞憂さんを恐れていた理由。
戦う前から敗北を認めてしまった理由が今なら理解できるんだ。
…この人は世界を見ているんだ。
国同士の争いとか能力の差なんかじゃなくて、
世界全体に目を向けているのが分かる。
…まるで米倉元代表を見ているかのような。
同じ感じがした。
僕にはない存在感と迫力には劣等感を感じてしまう。
…この人は凄いよ。
尊敬すら感じるほどの存在だった。
杞憂幻夜という人物に崇拝にも似た気持ちを感じてしまうんだ。
…この人が陰陽師の頂点に立つ人物なのか。
手が届かない雲の上のような存在。
そういう意味では天城総魔にも等しいかもしれないね。
…この世界には僕の手では届かない人達が沢山いるんだ。
上には上がいることを痛感してしまう。
…見てみたいな。
杞憂さんが願う理想を。
…望むべき結末を。
僕とは違って自信をもって行動する杞憂さんを尊敬の眼差しで見つめてしまう。
それくらい憧れを抱いていたんだ。
…僕にもそれほどの強さがあれば。
きっとシェリルに秘めた想いを打ち明けることも出来ると思う。
…だけど。
今の僕はまだ出来ない。
それだけの自信も勇気もないから。
…僕はまだまだ弱いな。
自分でも情けないと思うけど。
それでも勇気がもてなかった。
…この人のようになりたいな。
杞憂さんのように強く堂々と生きたいと願う。
だけどまだまだ叶いそうにはない。
…まだまだ成長が足りないんだろうね。
自分自身の情けなさを実感して一人で落ち込んでしまう。
そんな僕に杞憂さんは笑顔で語りかけてくれていた。
「きみの力が必要だ。他の誰よりも…俺はきみの協力を望んでいる。」
「僕の…ですか?」
「ああ、そうだ。」
僕に期待してくれる理由が理解できないんだけど。
杞憂さんは僕の手を握りながらはっきりと宣言してくれた。
「その身を犠牲にして…その身を地獄に落としまで『仲間の生存』を願ったきみの意志の強さを心から尊敬している。」
「…い、いえ。そんな…。」
まっすぐな想いに照れて俯いてしまう。
それでも杞憂さんは僕に協力を求めてくれたんだ。
「照れる必要はない。きみは信念を貫き通して最後まで戦ったのだ。その意志の強さは十分に誇るべきことだ。」
…そ、そうなのかな?
落ち込む必要も悔やむ必要もないと言ってから杞憂さんは僕に願ってくれていた。
「きみの力を貸してほしい。」
「は、はいっ!」
ただ一心に願う言葉を聞いた僕は無意識のうちに頷いていた。
…この人には敵わないな。
良くも悪くも杞憂さんに屈してしまったんだ。
だから僕は疑問も迷いも投げ捨てて、
素直な気持ちで杞憂さんと向き合うことにした。
「僕に出来ることがあるのなら、協力させていただきます。」
共に戦う覚悟を示した僕の決断によって、
この場に集まる全員がカーウェン連合国との戦争に赴く覚悟を決めた様子だった。




