暗黒迷宮の覇者
…はぁ。
もう無理。
「とりあえず、少し休ませて…。」
これ以上、奈々香の好感度が上がらないうちに抱きしめていた手を放して近くのソファーに腰を下ろすことにしたの。
「さすがにもう疲れたわ。」
「ふふっ。そうでしょうね。」
私の向かい側に彩花も腰を下ろしてる。
「ひとまずご苦労様。思った以上に迷宮の攻略が早かったわね。」
…う~ん。
やっぱりそうなるのかな〜?
正確な時間は計測してないけど。
最初の迷宮から最後の迷宮までの突破に要した時間は、
ほぼ12時間じゃないかな?
最初の失敗を含めれば変わってくるとは思うけれど。
再挑戦からの時間だけを見ればまさしく最速だったはず。
「丁度12時間というところかしら?」
「なのかな〜?」
「随分早かったわね。」
…ん~。
彩花でさえも数日を要した迷宮を半日で攻略したってことよね?
「間違いなく暗黒迷宮の覇者と言えるはずよ。」
…あ~。
そうなっちゃうんだ?
「これ以上の記録は有り得ないわ。」
…そうなのかな?
「まあ、私の場合は答えを知ったうえで迷路に挑んでいるような感じだから、あまり自信をもって誇れる記録じゃないけどね〜。」
「…と言うことは、攻略の順路を知っていたの?」
「あ、いや、そうじゃなくて…。」
知ってるって言うか、
分かってるって言うべきかな?
「どこをどう進めばいいのかが分かる感じ?」
「誰かに聞いたの?」
「ううん。そうじゃなくて、感じる…って言うの?たぶんこうじゃないかな~?って予想してる感じ。」
「へぇ~。そうなの。どうやって最短距離を進んでるのか疑問に思っていたんだけど。予測できるのは良いことね。」
…う~ん。
実際には予測じゃなくて、推測なんだけどね。
美咲さんの心が理解出来るからこそ、
迷宮の全てが把握できたっていうだけなのよ。
だから私一人の力で迷宮を乗り越えたとは言い切れない部分があるわ。
「でもまあ、結構良い勉強にはなったかな?」
力の使い方を学ぶ為には丁度良かったのかもしれないし。
その程度には満足しているの。
「はぁ…。とりあえず、お腹すいたかも?」
考えてみれば朝の食事以来、何も食べてないのよね〜。
「何か食べるものない?」
聞くだけ無駄な気はしてるけどね。
それでも彩花に尋ねてみると、
いつの間にか姿を消していた奈々香が静かに歩み寄ってきたのよ。
「…即席ですけれど、どうぞ。」
…おぉ~!
適当な食材で簡単に用意した夜食はサンドイッチとスープっていうお手軽な内容だったわ。
だけど今の私の食欲をそそるには十分な内容だったのよ。
「ありがと~!奈々香っ!」
幸せ一杯の笑顔でサンドイッチを口に運んでみる。
「美味しい~!!」
美咲さんと違って贅沢な料理じゃないけれど。
根本的な料理の腕は美咲さんにも劣ってないと思うの。
「さすがに姉妹ね~!」
「………。」
何気なく呟いてみた瞬間にね。
何故か奈々香の雰囲気が一変してしまったのよ。




