全ての魔術師ギルドは
「…姉と一緒にしないでください。」
…え!?
珍しくはっきりとした口調だったわ。
奈々香の発言によって動きを止めてしまった私に、
奈々香は睨み付けるかのような視線を向けてきたのよ。
「…乃絵瑠さんのこれまでの事情は全て姉から聞きました。」
…へ?
全部?
「それって…どこまで?」
「『全て』です。」
…うぁぁぁっ!?
これってあれよね?
もう何もかも知られてるってことよね?
その事実は奈々香の心からもはっきりと伝わってきたわ。
…うわぁ〜〜〜。
本当に全部知ってるのね。
あまり知られたくない出来事も。
美咲さんとのキスの事実も。
何もかも知ってるっていうことよ。
…うぁぁ〜〜〜~。
恥ずかしすぎっ!
顔を赤くしながらも必死に作り笑いを浮かべてみると、
奈々香は更なる衝撃的事実を告げてきたのよ。
「…乃絵瑠さんは本当に何も知らないのですね?」
…え?
知らないって、何を?
ため息混じりに呟く言葉を聞いて疑問を感じる私に、
奈々香がギルドの規定を教えてくれる。
「カリーナに限らず、全ての魔術師ギルドは基本的に無料です。」
…へっ?
無料?
奈々香の言葉の意味が理解できなかったわ。
その間にも奈々香は説明を続けてくれたのよ。
「魔術師ギルドは私達魔術師を支援するための施設ですので、基本的に『お金』や『見返り』といった何らかの報酬を求めることはありません。」
…え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
…そ、そうなのっ!?
全く予想外の言葉だったわ。
だからこそ奈々香が話す言葉は、
とある真実を浮き彫りにしてしまうのよ。
「姉から見返りを求められたようですが、それはギルドの規約に違反します。」
「うそおおおおおおぉっ!?」
あまりの衝撃に思わず叫んでしまったわ。
それでも奈々香は冷静に語り続けるのよ。
「姉の行動は明らかな違反行為です。場合によっては何らかの処分を受けるはずです。」
「そ、そうなの…?」
「…はい。」
私の問い掛けに奈々香ははっきりと頷いてる。
こうなると冗談とは思えないわよね?
「仕事の依頼ということであれば話は変わりますが、施設の使用に関してこちらが何かをする必要はありません。もちろん魔術の勉強という内容も魔術師の生存率を上げるためのギルドの責務の一つですので基本的には無償です。」
「…う、うそっ?」
「本当です。」
………。
断言する奈々香の言葉が事実であれば、
美咲さんは私を騙したことになるのよね?
…で、でもっ?
…だけどっ!
最終的な判断を下したのは私自身であって、
美咲さんが強制したわけじゃないわ。
…と言うことは?
また嵌められたのっ!?
着実に私を追い詰めて思い通りに動かしていたということよ。
全ては美咲さんの思惑通りに動いていて、
私は自らの意志で契約を結んでしまったという話になるみたい。
…騙されてたのっ!?
それが真実だと知ってしまったのよ。
…で、でも、まあ。
今はもう良い…のかな?
どうでも良いって思ってしまったのよ。
最初のきっかけがどうかに関係なく、
今は美咲さんが好きな事実に間違いはないから。
少なくとも美咲さんのおかげで私の心が救われたことも一つの事実だしね。
…まあ、今更って感じよね〜。
ため息を吐きたくなる想いは感じるけれど。
だからといって美咲さんを責める気持ちにはなれなかったわ。
…そういうところも含めて、美咲さんらしいかも?
暴走するくらいが丁度良いのかもしれないって思えるくらいにはね。
美咲さんの全てを受け入れているから。
「ま、まあ…今となっては一つの想い出…かな?」
自分自身に言い聞かせてみる。
そんな私を見ていた奈々香は小さくため息を吐いていたわ。
「…一応、姉には『お仕置き』をしておきました。」
…は?
お仕置きって何?
疑問を感じる私に奈々香は優しく微笑んでる。
「…職権乱用は明らかな犯罪です。」
ただそれだけを告げてから、
会話を打ち切ってしまったのよ。




