誰よりも先に
《サイド:盛長康平》
…あと少しだっ!
牢獄を脱出した俺達は京一を運んで城門付近にまで移動した。
「しっかりしろ、京一っ!!」
刻一刻と時間の経過と共に魔力の波動を弱めているのが感じられる。
…このままだとまずいぞっ!
京一を城門の外に運びだしたのはいいが、
治療が間に合うかどうかは疑問を感じていた。
…まさか、これほどとはっ!
広場の一角で京一の体を下ろす。
「死ぬな、京一っ!!」
必死に叫びかけてはみるが、
すでに絶望的な状況だということは俺もすでに気付いている。
…ちっ!
体中の骨が砕かれているのか!?
壊されてしまった京一の体に直接触れた俺だけは、
誰よりも先に絶望を感じ取ってしまっていた。
…こうなると、おそらくは内臓も。
決して無事ではないだろう。
本来ならば有り得ない角度に曲がる体。
京一の壊れた体は見るに堪えない凄惨な状況だった。
…それでも体に怪我が見れないのは、あの少女が治療したからか?
京一の治療に失敗したと言っていた少女の名前は知らないが、
治療を行っていた形跡ははっきりと感じられる。
…それでも間に合わなかったということか?
どうして扉を封印していたのかは分からないが、
おそらくは現状よりも酷い状態だったのは間違いない。
…だとすれば、だ。
一体どれほどの地獄を堪えてきたんだ!?
死を迎えるほどの拷問など、
俺達には想像も出来ない。
…とにかく今は治療を急ぐしかない!
焦りを感じながらも京一の治療を期待していたのだが、
肝心の美優は動かなかった。
「何をしているっ!?京一の治療を急げっ!!」
「………。」
急かしてみるが美優は動かない。
そして那岐知美も菊地英樹も京一を見つめるだけで回復魔術を発動させなかった。
「何をしているっ!?早く京一の治療を…っ!!」
「無理なのよ…。」
必死に叫んでみたことで、
ようやく美優が応えてくれた。
「私達には…無理なの…。」
…なんだと!?
「どういう意味だっ!?」
言葉の意味が理解できずに戸惑う俺に美優が現状を教えてくれた。
「澤木君の治療は終わっているわ。」
…は?
終わっているだと?
「少なくとも私達に出来ることは全て終わっているのよ。」
…なんだと?
魔術による治療は終わっている?
「それはつまり、ここから先は医者でもなければ手の施しようがないということか?」
「ええ、簡単に言えばそうなるわね。魔術医師がいれば治療出来るかもしれないけれど…私達にそこまでの技術はないわ。」
………。
美優達の医療技術は魔術医師には遠く及ばないということだ。
あくまでも傷の手当や応急処置程度の治療しか行えないらしい。
だからこそ医者は必要であり、
魔術医師という職業が存在するというのは俺も理解している。
「私達には何も出来ないのよ。」
ジェノスの常盤沙織は医学も学んでいた。
だから治癒能力に関しても優秀な成績を誇っていたようだが、
美優達にはそこまでの実力がない。
知識が足りないために治療を行えないと言っている。
…ここまできて!
再び訪れた絶望によって落ち込んでしまうことになった。
…どうすればいい?
俺達が落ち込んでいる間にも京一の死は近づいていく。
「何か方法はないのかっ!?」
絶望の中で叫んだ俺の期待に応えようとしてくれたのだろうか。
「私にお任せくださいませ。」
背後から優しい声が届いてきた。
…誰だ?
振り返って背後を確認してみる。
…あれは?
声をかけてきたのはシェリルの知り合いだった。
かなり急いできてくれたのだろう。
息を切らせながら駆け寄るシェリルと共に、
倉嶋絵里香が歩み寄ってきてくれたのだ。




