嫌と言うほど
《サイド:御神唯》
「…ありがとう。きみのおかげで…僕は、救われたんだ…。」
「…っ!」
彼の優しい想いにふれた瞬間に、
私はもう涙を堪えることが出来なくなってしまいました。
…どうして?
どうして彼はお礼を言ってくれたのでしょうか?
まだまだ治療は終わっていないのに。
…それなのに、どうして?
「あり…がとう…。」
…っ!?
「………。」
結局、何も出来なかった私の前で…彼は役目を終えてしまいました。
…そん、な?
「う…嘘ですよね?」
「………。」
彼は何も答えてくれません。
それどころか呼吸すらしていないのです。
…っ。
「…い、嫌ああああああああああぁぁぁ…っ!!」
目の前で力尽きた彼を見ていられなくて、
私自身の不甲斐なさに耐えられなくて、
人目も気にせずに泣き崩れてしまいました。
感謝の想いを残して笑顔を見せてくれた彼に、
何も出来なかったからです。
「…ごめんなさいっ。ごめんなさい…っ!」
何も出来なかったこと。
彼を救えなかったこと。
目の前の現実に絶望してしまった私に杞憂様が歩み寄ってきます。
「お気を確かに。そして目の前の現実を受け入れてください。」
…受け入れる?
「現実から目を逸らさずに全てを受け入れてください。」
これが戦争ということです。
これが現実ということです。
だからこそ逃げずに向き合うことが何よりも大切なのだと杞憂様は考えているようです。
「まだ終わりではありません。これはまだ始まりなのです。」
…これが、始まり?
「戦争はまだ始まったばかりなのですから。」
…確かに、そうかもしれません。
イーファの制圧とカーウェンの制圧。
今はまだ最初の一歩を踏み出したにすぎません。
「これから始まるのです。」
絶望はこれから。
辛い現実はまだこれから始まるそうです。
「現実と向き合ってください。それが意志を受け継ぐということです。」
「…は、はいっ。」
亡くなってしまった大切な仲間や守るべき人々の想いを受け継ぐということ。
その悲しみと苦しみを。
嫌と言うほど思い知らされる結果になってしまいました。




