辿り着けたのかな
《サイド:澤木京一》
………。
僕の目の前にいる人は誰だろう?
初めて聞く声だし、
何だかとても甘い香りがする。
出来ることならどんな人なのか見てみたいんだけど。
残念なことに僕の目はもう何も見えないんだ。
だから目の前にいる人物を想像することしか出来なかった。
「謝らなくて、良いんだ…。」
これは僕が望んだ結果だから。
僕が選んだ結末だから。
「きみは…何も悪くない、よ。きみが、僕に対して責任を感じる必要は…ないんだ。これは…僕が望んだ、結果なんだから…ね。」
二度と動けない体。
二度と見えない瞳。
それでも僕は幸せだと思っている。
「みんなが…生きているんだ。そして、すぐそこまで…来てくれているんだ…。それだけで、僕は…十分、なんだよ。みんなが…生きていてくれるのなら…みんなが、無事でいてくれるなら…僕は、満足なんだ。」
後悔はない。
絶望する必要もない。
ただ一つの願いのために、
この身体を捧げると決めたんだから。
だからこの想いが果たされたのなら、
もう望むべきことは何もない。
「悔いは、ないよ…。僕は…僕の想いを、貫いたんだ…。だから…これで、良い…んだ。」
もう戦う必要はない。
もう堪える必要もない。
そしてもう…失うモノも…何もない。
「…ああ、御堂…。きみもきっと…こんな気持ちだったのかな…?」
仲間の為に想いを貫くということ。
ずっと求めていた心の強さを手に入れることと引き換えに、
僕は多くのモノを失ってしまったのかもしれない。
「御堂…。僕はきみに辿り着けたのかな…?僕はきみに近付けたのかな…?」
絶望を知り。
絶望を乗り越え。
自らの想いを貫き通した。
そうしてたどり着いた結果によって、
僕の心は自分でも不思議に思うくらい安らぎで満たされていた。
「きっと、これで良いんだ…。」
悔いはないと思うだけで僕の心は満たされていく。
…だけど。
もしも一つだけ願いが叶うのなら。
…御堂。
出来ることならもう一度。
…きみと戦いたかったな。
今となってはもう手遅れだけど。
それでも叶わない夢を想いながら、
目の前にいる人物に微笑みを向けることにしたんだ。




