一人前の戦士に
《サイド:シェリル・カウアー》
「ったく、もう~!!」
…鬱陶しいのよっ!!
抑えきれない苛立ちと募る不安。
どうにもならない状況のせいで、
不機嫌さを隠す余裕もないまま陰陽師達との戦闘を繰り広げているの。
各方面から集まる陰陽師達を魔術で迎撃しながらイーファの軍を首都に足止めしているんだけどね。
私の心境はずっと苛立ちに満ちていたわ。
…こうしている間にも京一の馬鹿がっ!
王城で捕虜になっているはずなのよ。
…居場所が分かっているのに、助けにいけないなんて!!
助けたくても王城に近付けないから。
自分自身を犠牲にしてまでイーファの軍を足止めしている京一の努力を無駄にしないために、
ただただ悔しさを堪えながら戦い続けるしかなかったのよ。
…せめてもう少し戦力がいればっ!
ちゃんとイーファを占拠できるだけの戦力がいれば、
京一だけに辛い役目を託す必要なんてなかったはず。
だけどイーファにいる魔術師の数が足りていないせいで、
正面からイーファと対立することが出来ないでいるの。
そのせいで京一が囮になってしまって、
私達は人柱になってしまった京一に守られながらイーファに潜伏しているのよ。
…不甲斐ないわね。
本来なら京一を教育するためにイーファまで来たはずのに。
京一に戦い方を教えるどころか、
私達が京一に守られている状況なのよ。
…これじゃあ、何も言えないじゃない。
京一のおかげでイーファは身動きが取れないのは間違いないわ。
例え無謀としか言えない行動だとしても、
結果的に京一に守られているのは事実だから。
…最善策ではあったでしょうね。
もしも当初の予定通りに総力戦を始めていたら、
すでに私達は全滅していたかもしれないわ。
だけど京一のおかげで今はまだ誰も犠牲にならずに済んでいるのよ。
…最小限の犠牲で最大限の成果を示す。
そういう意味で言えば完璧な計画と言えるでしょうね。
…だから許せないの!!
完璧過ぎるから許せないのよっ!
京一の考えに気づかなかった私自身が許せない。
保護者気取りでいた私が守られているという事実が許せないの。
…こんなにも悔しさを感じるのは『あの日』以来ね。
自分が情けないと思うのは他のみんなも同じ様子で、
盛長康平や筑紫さん達もこの数日間を堪え忍ぶ思いで京一の身を案じ続けていたわ。
「一人でも多くの陰陽師を潰してみせるっ!!」
不安と心配を怒りに変えて陰陽師軍に襲い掛かるのは盛長康平。
戦い続ける勢いは修羅の如く、
周囲を取り囲む陰陽師達を次々と撃破しているわね。
「京一は殺させんっ!!!」
京一を守るために、
必死の思いで戦い続けているのよ。
…こうして首都で魔術師が暗躍する限り、京一は生かされるはずだから。
情報を引き出すための捕虜として生かされ続けるはずなの。
「私達で澤木君を守るのよ!!」
盛長康平の援護を行いながら首都撹乱作戦を継続する筑紫美優さんも、
すでにここへ来た当初の甘えを捨て去っているわ。
冷徹に。
冷静に。
一人でも多くの陰陽師を始末するために、
殺害を躊躇わないようになっているのよ。
…ある意味で当初の目的は果たしたと言えるでしょうね。
京一達を成長させるために実戦経験を積ませること。
そのためにイーファに来た当初の目的は果たせているのよ。
…このまま実地訓練を続けていれば即戦力になれるはず。
単なる学生ではない戦力の一員になれると思うわ。
今はまだ駆け出しでしかないけれど。
ここでの戦闘が終わるころには一人前の戦士になれるんじゃないかしら?
…たぶん、だけどね。
私を中心として亮平と絵里香が主力になって、
盛長康平と筑紫美優さんに那岐知美さんと菊地英樹が援護を行う。
そうして7人で行動する私達は、
京一を殺させないために休む間も惜しんで首都の各地で戦闘を継続していたわ。
「魔術師の力を示すわよ!!」
私達が脅威を示すほどに、
京一は捕虜として生かされ続けるはずだから。
「京一のために作戦を成功させるわよ!!」
いつ終わるかも分からない作戦だけど。
セルビナ王国が降伏してイーファが行軍を中断するまで戦い続けるしかないの。
まだまだ終わらない撹乱作戦。
終わりの見えない戦いだけど。
突如として一筋の光が差し込もうとしていたわ。
私も亮平達も考慮していなかった事態。
援軍の到着という喜ぶべき幸運が、
すぐ側にまで迫っていたからよ。




