私を助けて
《サイド:文塚乃絵瑠》
………。
………。
………。
何もない闇の中で、
過ぎていく時間の流れに身を委ねる。
精神を侵され。
思考を失い。
心が壊れた私は静寂が支配する世界の中で、
何も考えられないまま闇を見つめ続けていたわ。
………。
ただただ過ぎていくだけの時間。
だけどその間にも私の心には膨大な感情が流れ続けているの。
喜びや悲しみ。
殺意や欲望。
愛情に友情。
恨みに妬み。
あらゆる感情が心の中に流れ込んでくるのよ。
だけど。
それらは決して小数じゃないわ。
ギルド中の人々の心。
あるいは町中の人々の心。
数万、数十万におよぶ膨大な感情が心の中に流れ込んでくるから。
………。
対処しきれない膨大な情報量。
今まで知らなかった真実に身を委ねることしかできなかったわ。
全てを理解するなんて到底不可能だから。
一部を理解することさえも簡単な話じゃないから。
言葉も出ないまま無言で闇をさ迷ってた。
私は今、歩いているの?
私は今、立っているの?
私は今、倒れているの?
私は今、座っているの?
そんなことさえ分からないまま闇を漂っているのよ。
こんな状況では壊れた心を再構築するどころか、
思考能力そのものが欠落していたと思う。
………。
考える力さえなくして闇に飲まれるだけの私。
そんな私の心に美咲さんの祈りの声が聞こえてきたの。
『私を助けて…乃絵瑠ちゃん。』
必死に願って祈り続ける美咲さんの想いが私の心に届いてきたのよ。
『あなただけが、私の希望なの…。』
もう二度と感じることが出来ないかもしれない希望。
美咲さんにとっての最初で最後の願い。
愛を求めて。
友情を求めて。
救いを求める美咲さんの想いが、
私の心に変化を与えようとしていたわ。
『助けて…乃絵瑠ちゃん…。』
心から願う美咲さん嘘偽りのない本心がね。
私の心に安らぎを与えてくれたの。
「美咲…さん?」
微かに呟いた美咲さんの名前。
自分の声を自分自身で聞き取ったその瞬間に、
私は再び私自身の存在を感じとることが出来るようになれた気がしたわ。




