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THE WORLD  作者: SEASONS
4月25日
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2271/2355

この地獄から

《サイド:矢島美咲やしまみさき



「乃絵瑠ちゃん…。」



どうやら心が壊れて意識を失ってしまったようね。



…このままだと本当に死んでしまうわよ?



だけど私からはもう何も出来ないわ。


これは乃絵瑠ちゃんの試練だから、

私が介入することは出来ないの。


だから膝の上で眠る乃絵瑠ちゃんの寝顔を眺めながら、

もう一度目覚めてくれるのを信じて待つしかないわ。



「ここからよ…。ここからが乗り越えるべき本当の試練なのよ。」



壊れた心を『再構築』出来るかどうか?



現実を受け入れて。


真実を受け入れて。



善意を知り。


悪意を知り。



全てと向き合って。


世界と向き合って。



自分の限界を乗り越えることが出来るかどうか?



その為の試練が始まったの。



…きっと大丈夫。



「乃絵瑠ちゃんなら乗り越えられるわ。」



今だかつて誰も乗り越えられなかった真実という名の恐怖。



あらゆる友人や、あらゆる恋人。


そして米倉美由紀や、妹の奈々香でさえも辿り着けなかった『闇の境地』から乃絵瑠ちゃんが目覚めるのを願い続ける。



「この闇の中から抜け出すことさえ出来れば、乃絵瑠ちゃんは米倉美由紀を越えることが出来るのよ。」



最強の魔術師と呼ばれた米倉美由紀は闇属性において敵う者はいないと言われていたわ。


だけど。


あの米倉美由紀でさえも私の闇とは向き合おうとしなかったのよ。



力を見せ付ける美由紀と力を隠す私。


私達が『本気』で戦ったことは一度もないけれど。


それは美由紀が私にだけは決して手を出さなかったから。



かつてジェノス魔導学園の代表だった美由紀とカリーナ女学園の代表だった私は、

過去に幾度も魔術大会で顔を合わせているけれど。


それでも美由紀は私との戦いだけは徹底的に避けていたのよ。



私が抱える闇を恐れて。


心に巣くう狂気を恐れて。


私とは戦おうとしなかったわ。



その気になれば、まだまだ強くなれたでしょうに。


闇を恐れた美由紀は私に近づくことを恐れて自らの能力を封じるという道を選んでしまったの。



…馬鹿な子よね。



逃げたところでどうにもならないのに。


闇を否定しても世界は変えられないのに。



自分自身の力を抑え込むために指輪に頼ってしまったのよ。



…そこまで怖がる理由が私には理解できないけれど。



最も深遠に近い実力を持っていた美由紀まで私を恐れたせいで、

私は私の力がこの世界のことわりから外れているということを自覚したわ。



だからもう一つの性格を作り上げたの。



馬鹿な自分を演じるために、

もう一つの人格を作り上げたのよ。



闇を受け入れないこの世界で生きていくために心を二つに分けたの。



その反動として、

私はずっと望み続けてる。



本当の意味で私を受け入れてくれる相手が現れることを。


嘘偽りなく私を理解してくれる誰かが現れることを願い続けていたのよ。



…きっと、乃絵瑠ちゃんなら。



信じて願い続ける想い。



今まで一度も感じたことのない『愛』を求めて。


今まで一度も手に入れたことのない『友』を求めて。


乃絵瑠ちゃんに願いを托すことにしたの。



…信じているわ、乃絵瑠ちゃん。



あなたならきっと私を理解してくれるはず。



「あなたなら、きっと…。」



同じ苦しみを知り。


同じ現実を知ることで。


苦しみを分かち合えると信じているの。



「ごめんね、乃絵瑠ちゃん。私の地獄に引き込んで…ごめんね。」



自分の都合で利用してるのを私も理解しているわ。


だけどそれでも願ってしまうのよ。



…私を助けて。



「この地獄から…私を助けて。」



永遠の孤独。


全てを知ることが出来る才能がもたらす悪夢を呪い憎んでいるから。



…助けて、乃絵瑠ちゃん。



心の底から願う想いを祈りに変えて、

今はただ…乃絵瑠ちゃんが目覚めるまで待ち続けることにしたのよ。



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