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THE WORLD  作者: SEASONS
4月25日
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2270/2331

精神崩壊

《サイド:文塚乃絵瑠》



ここはどこ?



…って言うか、どういう状況なの?



気が付いたら何もない闇の中をさ迷っているのよ。



…どうすればいいの?



あまりにも唐突過ぎて、

今この場所で立っているのか、

それとも倒れているのかさえも分からなかったわ。



どこをどう見ても漆黒の闇のせいで、

どちらが前でどちらが後ろかすら分からないからよ。



ただ一つ言えるのは『闇に包まれている』ということだけ。



それ以上のことは何も分からないし、

何も知ることが出来ない。



…これからどうすれば良いのよ?



何も分からずに戸惑ってしまう。



そして刻一刻と時間が経つほどに、

恐怖が心を蝕んでいく。



…こ、怖いっ。



何も出来ないから。


何も分からないから。


何も見えないから。



暗黒迷宮を越える暗闇のせいで、

私の心に恐怖が広がってしまっていたわ。



歩くことも触れることも出来ない闇の世界で、

ただただ体を震わせることしかできなかったのよ。



…怖い。


…恐い。


…コワイ。



何も出来ない恐怖。


誰にも救いを求められない孤独。



これが死後の世界だと言われれば素直に信じてしまえるほど何もない世界なの。



…もしかして私ってホントに死んじゃったのかな?



即死魔術の影響で死んだと考えるのが当然に思えてくるの。


それくらい何も感じないし何も出来ないのよ。



…こんなにあっさりと?



努力も何もないまま死ぬとか、

情けなさ過ぎて泣けてくるわよね。



…うぅ。



「美咲さん。」



困り果てたことで美咲さんの名前を呼んでみるとね。


不意に声が聞こえてきたわ。



『周りに意識を向けなさい。』



…え?



『闇の中にあっても分かることはあるはずよ。』



…分かること?



この暗闇の中で?



何も見えないのに?


何も触れないのに?


何も聞こえないのに?



完全な無の世界で何をどうすれば良いのかなんて分からないんですけど?



…だけどね。



たぶんこれが訓練の内容で、

私が乗り越えるべき試練なのかもしれない。



闇を知り。


闇を制する為の第一歩。



『この世界はね。あらゆる存在が混ざり合って一つの形を成しているの。その見た目や形にこだわらずに本質に目を向けなさい。それが乃絵瑠ちゃんが乗り越えるべき最後の試練になるわ。』



…物事の本質?



相変わらず難しすぎて理解できないけれど。


美咲さんの言葉を聞けたことで、

ホンの少しだけど落ち着きを取り戻せたような気がするかも。



自分でも自覚があるんだけど。


そうとう弱気になっていたんでしょうね。



美咲さんの声が聞けたことが自分でも驚くほどの救いになっていたのよ。



…闇の中でも分かることって何?



たぶんそれは気配や匂いだと思う。


あるいは動きや流れっていう表現でもいいのかもしれないけれど。



…目で見えるモノが答えじゃないっていうことよね?



暗黒迷宮を視覚で突破出来ないように。


目で見えるモノだけで全てを判断するのは間違ってるっていう話よ。



…これが暗黒迷宮を突破する為のコツなの?



少なくとも一つの方法ではあると考えるべきよね。



…意識を周囲に向けてみるのかな?



自分を中心とするんじゃなくて、

世界を中心にして意識を向けてみる。


そんなふうに気持ちを切り替えて周囲の気配を探ってみるとね。



『そう…その調子よ。』



私の意識の中に美咲さんの声が流れてきたわ。



『それで良いの。そのまま全体に意識を向けるの。』



すぐ傍にいる感覚がする美咲さんだけじゃなくて、

美咲さん以外の広範囲にも意識を広げてみる。



その瞬間に。



…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?



現実を知った私の心が、

暗闇の中で粉々に砕け散ってしまったのよ。



…うっ!?



「ああああああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!!!!」



予想していなかった出来事に理解と把握が追い付かない。



心に流れ込む膨大な情報量に圧迫された私の心は死に等しい苦痛を感じていたから。



…い、いやぁぁぁぁぁぁっ!!



「ぅああああああああああああああああああああっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」



理性も感情も吹き飛ばす現実という名の真実。


周囲から流れ込むあらゆる感情やあらゆる思考が強制的に心に流れ込んでくるの。



…いやあああああああああああぁぁぁっ!!



「心に入らないでっ!!!」



…嫌あああああああああああああああああああああ~~~~っ!!!!!!




心が砕けるほどの苦痛。


対処しきれない膨大な情報が心を侵食していく。



…嫌ぁぁぁっ!!!



止めてっ!!!



…こないでっ!!!



必死に叫んでも止まらない情報。


一度開いてしまった心の中に、

あらゆる思考や感情が容赦なく襲い掛かってくるの。



…嫌っ!



「嫌~~~~~~っ!!」



流れ込むのは数え切れないほどの感情。


それらは善でもあり、悪でもあると思う。



…止めてっ!!



入って来ないでっ!!!!!



必死に叫び続けるけれど。


心を蝕む流れは止まらなかったわ。



そして。



「い…嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!」



膨大な情報がついに私の精神の限界を超えてしまったのよ。



「…嫌あああああああああああああああああああっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」



これまでにないほどの叫び声を上げた直後に。



…ぁ。


…ぅ。


…ぁ。


…ぁ。



叫ぶ力さえもなくした私の心は力尽きてしまったみたい。



………。



もう声を発することさえ出来なくなっていたの。



その結果として。


美咲さんが作り上げた闇の内部で意識を途絶えさえた私は、

精神に異常をきたして心は崩壊させてしまったのよ。




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