望む未来はどっち?
《サイド:矢島美咲》
…さあ、ここからが本番よ。
「…し、死ぬぅ!?」
私が放った闇に飲まれてしまったことで、
乃絵瑠ちゃんは死の恐怖を感じている様子ね。
…だけど。
私の試練はこの程度じゃないわ。
…これが始まりなのよ。
光も、影も、あらゆる存在を消し去る究極の闇に飲み込まれた乃絵瑠ちゃんは意識を失ってしまったみたい。
…さあ、乃絵瑠ちゃん。
私が放った闇が消えて光を取り戻した室内において、
地面に倒れ込んでしまった乃絵瑠ちゃんを眺めながらそっと微笑んでみせる。
「この闇を乗り越えられるかどうかが乃絵瑠ちゃんの運命を変えるのよ。」
ひとまず倒れた乃絵瑠ちゃんを回収して、
部屋の角に運び込むことにしたわ。
そうして訓練場の奥で休ませながら、
傍に座って乃絵瑠ちゃんの体を引き寄せる。
「大丈夫。乃絵瑠ちゃんなら乗り越えられるわ。」
…きっと、乃絵瑠ちゃんなら私の心を理解できるはず。
最後の訓練は心に巣くう絶望と向き合うこと。
『心が読める』という能力がもたらす悪夢を乃絵瑠ちゃんに体験させることにしたの。
…きっと乃絵瑠ちゃんなら理解できるわ。
本物の絶望と、この世界の失意を、ね。
良くも悪くも純粋な心を持つ乃絵瑠ちゃんだからこそ理解できる力があるのよ。
…今までは誰も。
奈々香でさえも辿り着けなかったけれど。
「だけどきっと…乃絵瑠ちゃんなら全てを受け入れられるはずよ。」
絶望を乗り越える可能性を信じて、
意識を失った乃絵瑠ちゃんを抱き寄せてから膝枕をしてあげる。
「生きるか死ぬか。乃絵瑠ちゃんが望む未来はどっち?」
そっと膝枕をしながら乃絵瑠ちゃんを見つめる。
そうして空いた手で乃絵瑠ちゃんの頭を撫でながら、
乃絵瑠ちゃんが目覚めるまで待つことにしたのよ。




