両方が終わらない限り
《サイド:長野淳弥》
…これはこれで修羅場だな。
説得に失敗した上矢遥が立ち去るのを見送ったあとで、
俺も御堂に話し掛けることにした。
「まあ、俺も同じ戦場にいたからな。上矢遥の苦しみと悲しみは知ってるつもりだ。」
竜の牙を率いる最後の宿敵。
竜道寺との戦いにおいて笹倉美和子を失った上矢遥の悲劇は俺も最後まで見ていたからな。
「俺達が束になっても『あの男』には勝てなかった。運良くアルバニアの陰陽師軍が来てくれたから全滅は避けられたが、もしもあのまま戦っていたら…俺達は確実に全滅していたはずだ。」
仮にあの場で俺が覚醒して成長していたとしても、
傷付いた体と失われた魔力はどうにもならなかった。
どう足掻いたとしても最悪の状況は変えられなかったはずだ。
だから指輪の封印を解除していたとしても、
精々足止め程度が精一杯だったと判断している。
「現時点であの男とまともに戦えるのは…竜崎慶太か御堂くらいだろうな。」
それでも絶対的に勝てないと思っている。
正直に言えば…竜崎慶太と御堂龍馬が二人で協力したとしても勝てる気がしない。
姉貴や雪が協力しても無理だ。
もちろん俺や里沙達が協力したとしても、
何の役にも立たないと思っている。
それほど危険な相手だからこそ、
どう足掻いても竜道寺には勝てないと判断していた。
「秘宝を持ったあいつは文字通り無敵だからな。ただでさえ実力が群を抜いているにも関わらず用意周到で狡猾。頭脳もバケモノ並でどうにもならない相手だ。」
魔術師としての実力も、
策士としての知略も、
他者を凌駕する竜道寺はまさしく悪魔と言える。
あるいは破壊神とも言えるだろうな。
そして竜道寺が持つ秘宝は、
月が存在する限り無限に等しい魔力をもたらす。
「秘宝によって無限の魔力を持つ『あの男』に対して、まともに戦っても勝ち目はない。」
それでも『あの男』を倒さない限り、
竜の牙の恐怖が消え去ることもない。
世界を制するに足りる力を持つ竜道寺の存在が、
魔術師の恐怖に繋がっているのは間違いないからだ。
「ミッドガルムへの行軍も大事だが、竜の牙との戦いも重要になるだろうな。」
兵器の破壊と竜の牙の殲滅の両方が終わらない限り平和は訪れないと考えているんだが、
それとは別に御堂が疑問を投げかけてきた。




