あの舞台で戦う日を
「久し振りだな、御堂。」
…ああ、そうだね。
堂々とした態度で近づいてきた人物を笑顔で出迎えることにした。
「やあ、大塚君。きみもここに参加しているんだね。」
ミッドガルムの砦において一度は目にしていたから、
彼がいることは知っていたんだけれど。
淳弥と同じでなかなか挨拶をする機会がなかったことで、
今まで話をすることが出来ずにいたんだ。
「以前会った時よりも魔力が上昇しているみたいだね。」
「ああ、俺にも色々あったんでな…。」
…色々、か。
あまり詳しいことは知らないけれど。
ミッドガルム軍と命懸けの戦闘を繰り広げていたのは間違いないだろうね。
実力は見てみないと分からないけれど。
大塚義明の魔力は以前の魔術大会と比べて数倍に膨らんでいるように思える。
おそらく今の大塚君の実力なら、
かつての僕を越えられたかもしれない。
そんなふうに思えるほどの急激な成長を果たしているんだ。
…だけど。
それだけで強くなれるわけじゃない。
「まあ、どれほど魔力を増したところで勝てない相手はいるだろうけどな。」
…ああ、そうだね。
どれほどの力を手に入れても。
どれほどの強さを身に付けても。
倒せない相手はいるんだ。
僕が総魔に届かないように、
大塚君にとっても越えられない壁は存在するはず。
…それなのに。
大塚君は目指し続けているようだ。
「俺はまだ強くなれる。その可能性を信じる限り、俺の成長は止まらない。」
…ああ、その気持ちは分かるよ。
僕が以前よりも力を増しているように。
大塚君も更なる高みを目指して力を求めているんだろうね。
「御堂。今は俺もお前に協力するつもりだ。だが決して油断はするな。いずれはお前も越えるつもりでいるからな。そしていつの日にか最強の地位を勝ち取ってみせる。そのために俺はこの戦争を戦い続けている。」
…ああ、受けて立つよ。
大塚君の強い意志をしっかりと受け止めたことで、
僕からも決戦の場を指定することにした。
「期待してるよ。きみの成長ときみとの再戦の時を。あの舞台で、戦う日を楽しみにしているよ。」
かつて僕が総魔に求めたように。
大塚君の想いをまっすぐに受け止めるつもりでいるんだ。
「僕は誰の挑戦でも受け入れる。それが最強の証だからね。」
今では失われた称号だけど。
それでも僕はあえて偽りの称号を掲げてみせた。
「僕も総魔を越えるつもりでいる。そして真の最強の座を勝ち取って見せる。そのために僕も戦い続けているんだ。」
かりそめの最強ではなくて、
自らが認める最強の座。
それはこの戦争が終わりを告げた時に示すことが出来ると信じている。
総魔が果たせなかった兵器の破壊を実現した時に、
総魔を越えることが出来ると信じているんだ。
その為に僕は戦い続けるつもりでいた。
「僕達で戦争を終わらせよう。」
宣言してから大塚君と握手を交わす。
ただそれだけのことでも大塚君の力強さが感じられた。
…なるほどね。
確かに努力次第で僕を超える可能性があるかもしれない。
「ふっ。」
大塚君が微笑んでいる。
「必ず越えて見せる。」
ただそれだけを宣言してから、
僕から離れてしまったんだ。




