同盟の理由
《サイド:米倉宗一郎》
時計の針が午前0時を過ぎて日付が変わってすぐの頃。
ミッドガルムの砦の内部にある会議室において前園奏と共に今後の計画に関して会議を行っていた俺の下に混合部隊を率いる由美が帰還してくれた。
「思ったよりも時間がかかったわ。」
疲れた表情で呟きながら歩み寄ってきた由美は、
砦の内部にある会議室の一席に座ってから俺と向かい合ってくれている。
「でもまあ、とりあえず戻ったわよ。」
「ああ、ご苦労だったな。」
疲れきった由美の表情を見てしまったことで苦笑いを浮かべるしかなかった。
…長距離の行軍を経たうえでの戦闘と追跡だからな。
疲労が蓄積しているのは無理もない。
それが分かっているからこそ、
前園副隊長も由美の苦労を労っていた。
「お疲れ様でした。」
「ホントによ。もう数か月分の仕事をした気分だわ。出来れば一週間くらい有給休暇が欲しいわね~。」
「…あ、あはははっ。そうですね。」
「でしょ~?」
苦笑する前園副隊長に愛想を振り撒いていたが、
何度か深呼吸をしたあとで、
由美が追撃の報告を始めてくれた。
「まあ、とりあえずミッドガルム軍に関してだけど…アルバニア軍に追い込まれて敗走したミッドガルム軍は一通り殲滅したわ。一応、カルナック山脈の北部まで追撃して全滅させたんだけど、それ以上進むのは危険だと判断して引き返して来たところよ。」
「ああ、それで良い。あまり深追いしすぎても別の部隊と遭遇する可能性があるからな。安全を考慮すれば後退が正解だろう。」
ミッドガルム国内を活動している別部隊の存在も無視出来ないからだ。
目的は不明だが、
国内で活動しているミッドガルム軍が存在していることを考慮すれば、
進軍よりも合流が優先で間違いない。
「それにセルビナが敗北を認めた現在、南部に布陣させている楠木司令官の部隊もこちらへの合流を考えているはずだ。」
セルビナが敗北したことによって南部からのセルビナ軍の進撃を考える必要がないからな。
楠木博文の部隊は俺達との合流を急ぐはずだと考えて言葉を続けることにした。
「そしておそらくだが、黒柳の部隊もこちらに向かって合流を急いでいるだろう。」
セルビナが落ちたことによって大悟の部隊もこちらに向かっているだろうと予想している。
「現在、アルバニア軍がイーファに向けて進軍しているからな。イーファとカーウェンを制圧するために、両国を支配下におくために行軍していることを考慮すれば、もはや共和国は両国からの攻撃を恐れる必要はない。」
アルバニア王国の協力によって、
イーファとカーウェンの進軍を考える必要がなくなったのだ。
それにより現在の共和国は全ての戦力をミッドガルムに向けることが出来る状況になっている。
「すでに伝令部隊が黒柳や楠木司令官に各地の情報を伝えているはずだ。それらを考慮すれば黒柳達もアルバニアの動きを考慮して、こちらへの合流を考えるだろう。」
イーファとカーウェンを恐れる必要はなく、
敗北を認めたセルビナの抵抗を恐れる必要もない。
それらの事実を考慮すれば、
残る強敵であるミッドガルムとの対立を考えて部隊の合流を急ぐだろうと推測していた。
「ああ…そうそう。それよ。そのことなんだけどアルバニア軍はどうして私達に協力を申し出てきたの?」
…同盟の理由か。
由美は俺と幻夜の交渉内容を知らないからな。
疑問に思うのも無理はない。
ミッドガルム軍の追撃を行っていた由美はまだ同盟の詳細を知らないのだ。
その辺りの説明に関してはある程度の人数が揃ってからでも良いと思っていたのだが、
今は時間に余裕があるからな。
由美にアルバニア王国との同盟の締結に関しての説明しておくことにしよう。
「今回、アルバニア王国は共和国との同盟の締結を求めてきた。」
両国の未来の為に和平の交渉を持ち掛けてきたのだ。
「互いの国のために。互いの存続のために、共存という目的を掲げて協力を求めてきたのだ。」
「ん~。そこが分からないのよね〜?どうして今なの?」
今まで共和国と敵対していたにも関わらず、
何故この状況で同盟を望むのか?
その理由こそがこれまでの努力の成果とも言えるだろう。
「今だからこそだ。戦争という状況が同盟という決断に導いたのだろうな。」
共和国は力を示してアストリア王国を滅ぼした。
そしてセルビナ王国も制圧寸前にまで追い込んでいた。
そのうえでミッドガルムと対立関係にあるのだ。
「大陸南部における国家情勢が大きく変動している。その機会を利用することで目的を成し遂げようとしているのだろう。」
「その目的って何なの?」
「それは…」
次々と感じる疑問を問い掛ける由美の質問に答えようとしたのだが、
その前に再び会議室の扉が開かれた。




