うつろな瞳
《サイド:フェイ・ウォルカ》
「落ち着け、御堂っ!!!」
今だに収まらない地震の最中だが、
それでも御堂に歩み寄って大声で呼び掛けることにした。
「お前が取り乱してどうする!?」
事実を知る者が錯乱していては話を聞くことさえできないからな。
「しっかりしろ!」
何度も声をかけてみたのだが、
それでも御堂は反応を示さない。
「…違…うっ。違うんだっ!!」
目の前の現実から目を逸らそうとするばかりで、
周りの状況が見えていない様子だった。
…あの御堂がここまで取り乱すとはな。
あまり付き合いが長いわけではないが、
それでも俺が知る限り御堂は常に冷静な男だったように思う。
喜怒哀楽はあるが、
これほどまでに戸惑う様子を見せたことは今まで一度もなかったからだ。
…それなのに。
これほどまで取り乱すということは、
それだけの何かを経験してきたということだろう。
…あのアストリアで実際に経験してきたのだからな。
だとすれば、何も知らない俺達が御堂を責めることは出来ない。
兵器の力を知らない俺達が、
御堂に言えることは何もないからだ。
…だが。
それでも今は御堂を放置することは出来ない。
「しっかりしろ、御堂!!」
御堂の肩を強引に掴みながら全力で叫ぶ。
そして御堂の瞳をしっかりと見つめたのだが、
御堂の視点は俺に定まらないまま、
うつろにどこか遠くを見つめていた。
…ちっ。
まるで廃人だな。
心を失った人間というのはこういう目をするものなのかもしれないと思わせるほど、
御堂の瞳からは生気が消え去っていた。
…これではダメかっ!!
単純な呼びかけでは御堂は立ち直らないだろう。
ならば別の方法を考えるしかない。
…どうすればいい!?
俺の呼びかけは聞こえていない。
常磐成美の想いも届いてはいない。
黒柳大悟の声も聞こえていない様子だ。
…ならば、もっと別の何かだ!!
御堂の心を動かせる何かを用意しなければならない。
…どうればいい!?
どうすれば御堂の心に届く!?
必死に考えてみる。
そして周囲を見回してみたことで、
一つの可能性に気付くことが出来た。
…これならどうだっ!?
例え意識出来ない状況でも、
共に戦い抜いた友の想いは届くはずだ。
「現実から目を逸らすな御堂!お前がそんなことでは北条真哉の想いも無駄になるぞっ!!」
「………っ!?」
御堂の生存を願い。
御堂の力になることを望んだ北条真哉の想いは、
消えることのない形として俺達の傍にあるのだ。
「しっかりしろ、御堂っ!!!その情けない顔を北条真哉に見せるつもりか!?」
「………。」
必死に呼びかけながら御堂の目の前にラングリッサーを示す。
「現実を受け入れろっ!!そして立ち向かえ!お前にはまだ出来ることがあるはずだ!!」
北条真哉が残したラングリッサーを見せながら怒鳴り付けた。
「真に仲間を想うのならば最後まで立ち向かえ!!お前にはまだやるべきことがあるはずだ!兵器が実在するのならば全ての兵器を破壊しろ!それが亡くなった仲間達にするべき弔いだっ!!」
「………。」
どこにあるのか所在不明の兵器。
誰が使用したのか?
どこで使用されたのか?
どうして現存しているのか?
何故セルビナを襲ったのか?
それら全てが不明の状況でも、
実在する兵器を放置することは出来ない。
「仲間達の想いを無駄にするな!!」
兵器を知り。
兵器を見たことがあるのは御堂のみ。
だからこそ今は御堂に対して厳しく接するしか選択肢がない。
「共和国を守る為に!大切な人々を守る為に!お前には最後まで戦い抜く義務があるはずだ!!」
友の想いを無駄にしないために。
愛する人の想いを無駄にしないために。
ただただ願う。
「お前が兵器を止めろ!!それがお前に託された役目だ!!」
最後の生き残りとして。
たった一人の生き残りとして。
仲間の想いを受け継ぐ御堂に全てを托す。
「立ち上がれ御堂!!それが天城総魔の残した意志だとは思わないか!?」
御堂を生存させて共和国の未来を託した天城総魔の意志だと告げた。
「お前も受け継いでいるはずだ!俺の手に北条真哉の想いがあるように!お前の中にも天城総魔の想いがあるはずだ!!」
例えそれが形のある何かではなくとも、
想いは受け継がれているはずだ。
「天城総魔の意志を受け継いで戦え御堂!!それが亡き友へのただ一つの弔いだ!」
御堂が出来ること。
友への役目を宣言する。
「天城総魔の代わりに、お前が兵器を破壊しろ!!」
それが出来るのは御堂だけだ。
「立ち上がれ!そして戦え!それがお前に託された役目のはずだ!」
現実と向き合い。
現実を受け入れて。
現実を乗り越えること。
その為に。
俺は御堂に誓いを立てることにした。




