そんなはずはない
空が夕陽で赤く染まり始めてきた。
おそらく時刻は午後5時頃。
時計の針が特定の時刻を指し示したその瞬間に、
突如としてセルビナの大地が揺れ始めた。
…なんだっ!?
地震っ!?
突然の出来事に慌ててしまったけれど。
それは僕だけじゃなくて、
街道を進軍していた共和国軍の仲間達も同様の困惑を感じて動きを止めている様子だった。
「この揺れはまずいぞっ!」
激しさを増す地震の中で黒柳所長が全部隊に指示を出している。
「全軍待機っ!!!地震が収まるまでその場に留まれっ!!」
無理な行軍を避けて安全の確保を優先した黒柳所長の指示によって、
共和国軍は即座に動きを止めていた。
…だけど。
地震の規模は秒単位で拡大しているんだ。
激しく揺れる大地。
止まらない振動。
あり得ないほどの勢いによって、
周囲には幾つもの地割れが発生するほどの大規模な地震に発展していく。
…どうして急に!?
「きゃぁぁぁっ!!!」
あまりの激しさのせいで栗原さんが体勢を崩してしゃがみ込んでいる。
その隣では成美ちゃんも体をふらつかせているようだ。
「ぁ…ぅ…ぁ…っ…!?」
「成美ちゃんっ!」
地震の揺れに耐え切れずに倒れ込みそうになった成美ちゃんの体を慌てて支える。
「大丈夫かい?」
成美ちゃんの体を引き寄せてしっかりと抱きしめた。
だけど僕でさえも立っているのがやっとの状況なんだ。
…くっ。
地震という災害は本能的に悪夢を思い起こさせる。
…まさか、ね。
思い出したくない現実。
多くの仲間を失った悪夢が脳裏を過ぎってしまう。
…いや、でも、まさか?
体で感じる最大級の恐怖が、
あの日の出来事を思い起こさせるんだ。
…もしかして、これはっ!?
僕の本能が。
そして直感が最悪の展開を予測している。
「まさか…っ?まさかっ!?」
考えたくはない事実。
だけど心に反して、体は恐怖で震えてしまっていた。
「ち、違うっ!そんなはずはないんだ…っ!!」
必死に否定してみても。
僕を襲う現実は真実だけを物語っている。
「違うっ!!これは何かの間違いだ!!」
一際激しい震動が僕達に襲い掛かった。
そして地震の発生から僅か数分後に、
僕にとって最悪の展開が現実として発生しようとしていたんだ。
「ダメだっ!!止めるんだぁぁぁぁっ!!!!」
ここにはいない誰かに向けて必死に叫ぶ。
そんな僕に戸惑いの視線を向ける仲間達だけど。
今の僕に周囲を気にしていられる余裕なんてなかった。
「御堂さん…?」
「どうしたのだ?」
絶叫とも言える僕の言葉を聞いた成美ちゃんや黒柳所長が戸惑う様子を見せた次の瞬間に。
全てを終わらせるための悪夢が蘇ってしまった。
ここで第2話は終了です。
次からはミッドガルム編になります。




