大陸随一
《サイド:御堂龍馬》
セルビナの北部。
国境へと続く街道。
セルビナの王都をオルバ学園長とリン学園長の二人に任せた僕達は、
新たに加わった仲間達と共にミッドガルムの国境を目指して行軍することになった。
…次はミッドガルムか。
黒柳所長が率いる部隊は今まで通り共和国の海軍がほとんどだ。
補佐役として鞍馬信彦さんと西園寺さんが傍に控えていて、
藤沢さんや研究所の職員達も同行しているけどね。
そこに僕や成美ちゃんや栗原さんや鈴置さんに、
和泉さんや岩永君に大森君に梶原さんと伊倉君の特風の生徒達。
さらにはフェイやマリアさんやジェリルさんやピーターなどのデルベスタの生徒達も含めて、
海軍と多国籍軍の一部にセルビナ魔術師ギルドの戦力が合流したことで総勢で2万に及ぶ軍勢になっている。
その中でも僕とフェイの存在が大きいようで、
十分に共和国の主力と言える戦力を有していると黒柳所長は言っていた。
「セルビナとの戦争が終わって、次はミッドガルムか…。」
国境にいるはずの楠木博文さんの部隊と合流してから、
米倉さんの部隊と合流する予定で軍を進めているみたいなんだけど。
目的地まではそれなりの距離があるようで、
急いでも日付が変わる頃までは移動が続くようだ。
「ふう。ミッドガルムが停戦要請を受け入れれば良いんだがな。」
…そうですね。
心から願う様子の黒柳所長に少しだけ話を聞いてみることにした。
「あの、それよりも気になることがあるのですが…。」
「ん?どうした?」
「えっと、その…。」
セルビナ魔術師ギルドからの報告によって知った情報。
澤木京一君を含むグランバニアの生徒とシェリル・カウアーさんがイーファに潜入したという事実に関して話を聞いてみることにしたんだ。
「澤木君達は無事なのでしょうか?」
「ああ、そのことか…。」
澤木君達が今どこで何をしているのか?
そこまでの詳細はセルビナ魔術師ギルドにも分からないらしい。
あくまでも魔術師ギルドを経由してからイーファに向かったという事実を確認しているだけで、
イーファ国内の情報までは分からないそうだ。
だからこそ僕は澤木君達のことを少し気にかけていた。
「イーファに援軍を送るべきではないでしょうか?」
「…どうだろうな。その必要はないかもしれないな。」
「どうしてですか?」
「詳細までは不明だが、アルバニアの軍がイーファに向けて行軍しているのが間違いないそうだ。」
…アルバニアがイーファに?
「彼等は現在、共和国と同盟関係にあり、イーファを制圧するために進軍しているそうだ。だとすれば、わざわざこちらが戦力を分散させる必要はないだろう。」
アルバニア王国の陰陽師軍にイーファを任せれば、
行方不明の澤木君達も無事に救出できると考えているようだ。
「アルバニアの陰陽師軍はアストリアやセルビナの比ではないからな。」
「そうなのですか?」
「ああ。その実力はまさしく大陸随一だろう。少なくともアルバニア軍を止める実力などイーファには存在しないはずだ。」
だから安心して任せておけばいいと言って、
黒柳所長は優しく微笑んでくれていた。
「…そうですか。分かりました。だったらみんなの無事を信じることにします。」
本当なら今すぐにでもイーファに駆け付けたいと思うけれど。
気持ちを抑えてミッドガルムに向かうことにする。
…あまり無理は言えないからね。
セルビナ王都での独断専攻や各戦闘での独走など。
自分勝手に行動してきたことを考えるとあまりわがままは言えないと思う。
だから今は大人しくすることにしたんだ。
…黒柳所長を信じよう。
澤木君達の無事を願いながら歩みを進めていく。
その途中で。
僕にとっての『最悪の展開』が何の前触れもないままに突如として襲い掛かろうとしていた。




