時代の流れ
「もう一度確認するが、宗一郎さんが率いる部隊が北部の国境に布陣しているのだな?」
セルビナとミッドガルムを繋ぐカルナック山脈において共和国軍が布陣しているという情報をすでにギルドから聞いていたのだ。
「はい。セルビナ北部のカルナック山脈において楠木博文様の部隊が布陣しているのを確認しました。さらにその先のミッドガルム側の国境には米倉宗一郎様の部隊が布陣しているそうです。」
…ふむ。
やはり宗一郎さんはそちらにいるのか。
国内の情報収集を一手に引き受けるギルドは常に最新の情報を入手しているからな。
誤報を心配する必要はないだろう。
「それとアルバニア王国との同盟も成立したようです。現在アルバニア軍はセルビナを南下してイーファに進軍中のようでした。」
…ほう。
アルバニア王国との同盟が成立したのか。
どういう理由でそうなったのかは知らないが、
傍でギルドの報告を聞いていた野々村斉蔵が突如として笑い出した。
「ふはははっ!…そうか、アルバニア王国は共和国に同盟を申し出たのか。」
色々と思うことがあるのだろう。
面白いというよりも、
悔しさが感じられる笑いだった。
「これが時代の流れというものか…。セルビナは流れから外れて、アルバニアは流れを掴んだということだな。」
…ああ、確かにな。
野々村斉蔵の発言は的を得ていると言えるだろう。
セルビナは共和国に敗れて滅亡の危機にあるが、
アルバニアは共和国と手を組んで国家の安全を手に入れたのだ。
これにより大陸南部は完全に二つの勢力に別れたと言える。
共和国とアルバニア王国、そして属国となったセルビナ王国の勢力。
そしてミッドガルムとイーファとカーウェン連合国の勢力。
大陸南部を二分する勢力となって互いが互いの勢力と対立する形になったのだ。
「両者の戦力を比較すれば、共和国とアルバニア王国の同盟側が圧倒的に有利だろうな。」
…かもしれないな。
共和国だけでも危険な存在だと思われている現状で、
大陸最強と言っても過言ではない陰陽師軍を率いるアルバニア王国が手を貸したとなれば総合的な軍事力は大陸南部においてまさしく無敵だ。
イーファとカーウェンがどれほどの抵抗を示そうとも。
例えミッドガルムが全軍を投入したとしても。
共和国の勝利は揺るがないと言い切れる。
「もはや戦争の行方は決まったも同然か。」
…その可能性は高いだろうな。
だが、終わってみるまでは油断出来ない。
ミッドガルムが徹底抗戦の姿勢を崩さない限り、
泥沼の争いは終わらないのだから。
「まだまだ油断は出来ない。」
セルビナ王国との戦いは終わったものの、
ミッドガルムとの戦いは終わっていないのだ。
セルビナ王国からの停戦の要請にミッドガルムはどう応えるのか?
そこに共和国とミッドガルムの命運がかかっているとも言える。
単純にセルビナの進言を受け入れて戦争を止めてくれればそれで良いのだが、
もしも停戦を受け入れなければ新たな戦いに向けて行動しなければならなくなるのだからな。
「早急にミッドガルムとの交渉を始めてくれ。その間に俺達はミッドガルムへの布陣を完成させておく。」
「…ああ。任せてくれと言いたいところだが、こちらからの停戦要請を受け入れなければ、もはや説得は不可能だろうな。ミッドガルムとの全面戦争は避けられん。」
…だろうな。
おそらく栗原君の説得さえも通じないだろう。
「かの国は侵略を目的として軍隊を動かしているからな。我等とは違って説得自体が難しい。」
…ああ、そうだな。
王族の判断だけで動いていたセルビナとは違い。
ミッドガルムは大陸の覇権を目的として動いているからだ。
だからこそ生半可な説得では通じないだろうとは俺も考えていた。
…もしもミッドガルムが戦争の続行を決断した場合。
ミッドガルムは滅亡まで戦い抜くだろうな。
滅亡するのが共和国か?
それともミッドガルムか?
それは終わるまで分からない。
だがこれらから行う停戦要請次第で両国の未来は決まってしまうのだ。
「最善は尽くす。」
「ええ、期待しています。」
今は野々村斉蔵の采配を信じて、
鞍馬信彦に指示を出すことにしよう。
「俺達はミッドガルムの国境に向かう。そこで宗一郎さんと合流して今後の方針を話し合うつもりだ。」
「はい!分かりました!」
鞍馬信彦が俺の指揮下に入ってくれた。
「ご同行させていただきます。」
多国籍軍から離れて海軍に加わってくれたのだ。
新たな協力者を得たことで、
早急に出陣の支度を始めることにする。
「鞍馬君と西園寺君。二人は早急に部隊を再編成して王都の北部に部隊を布陣させてくれ。」
「了解しました。」
「はい!すぐに部隊をまとめます。」
二人は俺に一礼してから即座に行動を開始してくれた。




