無条件降伏
《サイド:御堂龍馬》
王城前の広場。
午後3時を過ぎた頃になって、
多くの人々が広場に集まり始めた。
今はセルビナの陰陽師軍を中心として共和国軍も広場に集結している。
そして王都に住む人々も大挙して押し寄せつつある広場は10万を越える規模になって、
多くの人々が停戦の協議に関して期待と不安を感じている様子に見えた。
「予想以上に集まったな。」
「ええ、そうですね。」
今もまだ続々と集結しつつある王都の人々を黒柳所長と並んで眺める。
「こうして話を聞いてもらえるようになって良かったです。」
「はははっ。それもそうだが、突然姿を消したと思えば国王を捕獲したうえに陽師軍まで味方に引き込んでくれるとはな。毎回毎回、きみの活躍には驚くばかりだ。」
「い、いえ…。」
楽しそうに笑ってくれる黒柳所長だけど。
僕としてはそれほど活躍したとは思ってない。
「僕は何もしてません。みんなに助けられながら進んでるだけですから…ただそれだけです。」
陰陽師軍を止めたのは栗原さんだ。
そして王都に住む人々を動かしたのはフェイ達でもあるし黒柳所長達でもある。
だから僕がしたことと言えば王城に突撃するきっかけを作ったくらいで、
謁見の間に向かっただけでしかない。
特別に何かをしたわけではないし、
みんなに支えられながら前に進んできただけなんだ。
「みんなのおかげです。」
そう思うからこそ僕を支えてくれる仲間達に精一杯の感謝の気持ちを言葉にして伝えたいと思ってる。
「みんながいてくれるから出来たことです。だからこれはみんなのおかげです。」
「「「ふふっ。」」」
「「「ははっ。」」」
僕の想いを聞いたみんなは照れくさそうな表情で微笑んでいた。
栗原さんも成美ちゃんも鈴置さんも。
和泉さん達やフェイ達も自然と笑顔を浮かべていたんだ。
「みんなのおかげですよ。」
多くの犠牲や数々の困難を乗り越えてここまで来たこと。
その事実を噛み締めるように想いを伝えてみた。
「僕の力ではありません。ここまで来れたのはみんなの努力の結果です。」
僕の視界には見渡す限りの人だかりがある。
今回の戦争に関わる多くの人々が集まる広場において、
共和国軍は勝利をつかみ取ろうとしているんだ。
「敵も味方もありません。みんな大切な命で、みんな大切な存在です。そのことを僕は知りました。」
アストリアでは生き残るだけで精一杯だったけれど今は違う。
しっかりとした意志を持って、
自分自身の願いと想いを信じて戦場を戦い抜いてきたんだ。
そしてその結果として共和国の勝利という一つの結果にたどり着こうとしていた。
「みんなのおかげで戦争が終わるんです。」
信じる想いは現実になって、
セルビナ王国は敗北を認めてくれた。
そして戦争が終わる瞬間がすぐそこにまで迫っているんだ。
この状況までたどり着いたところで、
一人の女性が黒柳所長に駆け寄ってきた。
「所長!」
「ん?おお!ようやく目覚めたか。待っていたぞ西園寺君。」
魔力が回復して復帰した西園寺さんを笑顔で迎える黒柳所長だったけれど。
西園寺さんは復帰早々から仕事を押し付けようとしている様子だった。
「セルビナ側の準備が整ったそうです。早急に停戦交渉とセルビナの敗北宣言を行ってください。」
「ああ、分かった。」
広場の中央に安置された国王と本宮さんの遺体の側に用意された交渉の場。
そこに黒柳所長は共和国の代表として終戦を宣言する段取りになっている。
「ついにここまで来たな。」
「ええ、そうですね。」
「長い戦いだったな。」
「…はい」
僕達の視線の先には野々村さんや海軍の幹部達がいる。
そして陸軍の幹部や陰陽師軍の幹部もいて、
国王以外に捕獲された王族達を含めた多くの人達が集結しているんだ。
「王族が地位を失った今、立場的にワシが出るしかあるまい。」
セルビナ側から野々村さんが代表として歩み出てきた。
そして野々村さんの側には飯塚さんが側近として控えている。
「それでは始めようか。」
交渉を開始する黒柳所長だったけれど。
野々村さんは最初から全てを受け入れるつもりのようだね。
「こちらは敗戦国だ。条件を突き付けられる立場ではないからな。共和国が求める全ての条件を無条件で受け入れよう。」
「「「「「………。」」」」」
あっさりと全ての権利を托す野々村さんに対して反論する人は一人もいなかった。
ごく一部の王族達を除いて、だけど。
誰もが交渉の成り行きを固唾を飲んで見守っているんだ。
「…ふむ、そうか。ならばこちらの条件を提示しようか。」
セルビナ側が無条件降伏を宣言したことで、
黒柳所長はセルビナに対する処分と今後の方針を話し始めた。




