死を願う命まで救うのは
僕達の足元で死を迎えた国王と本宮さん。
二人の亡きがらを前にした僕は涙を流すことしかできなかった。
「…すみませんっ。」
目の前で消えた命を守れなかったんだ。
全ての命を守ると願っていたにも関わらず。
結局、二人に救いの手を差し延べることは出来なかった。
最期の信念を示して死を願った本宮さんの想いに逆らうことが出来なくて二人の死を認めてしまったからだ。
「あなたの意志を…尊重します。」
本宮さんの願いを叶えるために。
僕からも栗原さんに願う。
「二人をこのままにしてあげてほしい。このまま、そっと…」
眠らせてあげてほしいと願う僕の瞳から涙があふれていく。
「本宮源吾さんの想いだけは…。この想いだけは汚すわけにはいかないんだ…。」
自らの手を汚してまで全てを終わらせる道を選んだ本宮さんの想いは尊重すべきだと思う。
「このまま眠らせてあげよう…。」
「「「………。」」」
何度も願う僕に成美ちゃんも鈴置さんも栗原さんでさえも何も言わなかった。
もしもここで死を奪えば本当に全てが失われてしまうからだ。
本宮さんが示した覚悟も想いも未来でさえも、
何もかもが狂ってしまう。
国王を殺した罪を背負いながら生き続ける絶望を押し付けることは誰にも出来ないんだ。
…国王の死は避けられない。
それだけはどうしようもないんだ。
戦争を始めた責任として王族の処刑は避けられない。
僕達がどれほど願ってもその現実だけは変えられない。
もちろん必死に願えば投獄で済ませることは出来るかもしれないけれど。
それが幸せかどうかは疑問でしかない。
…避けられない死はあるんだ。
その命まで救うのは傲慢なのかもしれない。
死を願う命まで救うのは単なる自己満足でしかないから。
「…そうね。このまま眠らせてあげるべきなのかもしれないわね。」
…ああ。
本当の意味での救いを目指すのなら、
二人の死を認めることも必要だと僕達は知った。
「助けたいけど助けてはいけない。そういうこともあるのね…。」
僕が涙を飲んで堪えているように。
栗原さんも我慢しなければならないということを理解してくれた様子だった。




