ふざけているのは
《サイド:鈴置美春》
…うぅ~ん。
なかなか頑固な人よね。
「決して屈しはしない!それが我等に示せるただ一つの正義なのだからなっ!!」
「「………。」」
自らの命よりも誇りを選ぶ国王の生き様に、
御堂先輩も栗原さんも何も言えなくなっていたわ。
「…説得は無理か。」
「さすがに国王は難しいわよね〜。」
説得に悩む様子の二人だけど。
…だけどね?
これって本当に悩む必要があるの?
私としては疑問しか感じないのよ。
だからね。
フェイさんや和泉さん達も成り行きを見守る中で、
今度は私が話をしてみることにしたの。
「まあ、言いたいことは分からなくもないんですけど…。それって本当にみんなが思ってるんですか?」
「…何だと?」
私の問い掛けに不満を感じる様子の国王だけどね。
私としては追及を止めるつもりなんてないわ。
「ちゃんと国民に確認したんですか?魔術師が敵かどうかを…ちゃんと確認したんですか?」
「貴様ぁ!!何が言いたい!?」
「いえ…少しだけ疑問に感じただけです。」
ここ来るまでの間に私達が対立してきた人達はそうだったのかもしれないわ。
…でもね?
「この王都に来た時、民間から呼び集められた人達は言っていました。『本当は戦いたくない』と、『戦うつもりなんてなかった』と言っていました。」
だからね。
もしもね。
その言葉が真実だとすれば?
「本当はほとんどの人達が魔術師を恐れていないのではないですか?」
普通に考えれば、
むやみに敵対するよりも不干渉を考える人達のほうが圧倒的に多いと思うのよね。
「魔術師が敵だと言いだしたのは本当はあなた達ではないですか?国民を守るために軍を動かしているのではなくて、本当はあなた達の立場を守るために国民を言い訳にしているのではないですか?」
「…なっ!?ふざけるなーっ!!!!」
私の指摘に激怒する国王だけど。
私の追及は止まらないわよ。
「もちろんふざけるつもりはありません。」
…と言うよりも。
「もしも私の考えが真実だった場合。ふざけているのはあなた達のほうですよね?王族の立場を守るために、今の地位を守るために、共和国を滅ぼそうとしているのなら、あなたの罪は万死に価します!!」
国民のためではなくて自分達のため。
もしもそんな理由で始められた戦争だとしたら、
さすがに私も我慢できる自信なんてないわ。
「あなたの正義と私の推測。どちらが正しいかを確認しませんか?もしも本当にあなたの言葉が真実であれば誇り高き死を認めます。ですがもしも私の推測が正しかったら、その時はあなたには最大限の謝罪を要求します。」
意地も誇りも捨てて、
ぶざまに堕ちていくだけの謝罪を求めるの。
「戦争の意義とその意味を…国民に問い掛けてください。」
もしも国王に賛同する人々がいるのなら広場に協力者が現れるはずよ。
そして共和国軍を排除するために国民が立ち上がるなら国王の勝ち。
だけどもしも協力者が現れなければ私の勝ち。
その勝敗によってセルビナ王国の運命を賭けることを提案したの。
「あなたの語る理想と正義が本物かどうかを私達に示してください。」
そのために。
一時的に御堂先輩に身柄を委ねることにしたわ。
「それでは御堂先輩。ひとまず国王を確保してください。そして広場に移動しましょう。そこで王都の人々に問い掛けます。戦争の意味と、正義の真実を…。」
「…あ、ああ。分かったよ。」
真剣な表情で願う私の意見を受け入れてくれた御堂先輩は怒りに震える国王に歩みを進めていったわ。
「僕達に同行してもらいます。良いですよね?」
「ふ、ふざけるなっ!!」
御堂先輩から逃れようとして抵抗の意志を示す国王だけど。
即座に和泉さんやフェイさん達が取り囲んでしまったわ。
「往生際が悪いわよ?」
「お前の正義を見せてもらおうか。」
国王の側近達を排除したフェイさん達が国王を捕獲してくれたの。
「大人しく捕まりなさい!」
地下から持ち込んだロープを回収した和泉さんが国王の体を拘束していく。
「なっ!?無礼者!!!」
激しく激昂する国王だけど。
捕らわれてしまった国王を助けようとする人は一人もいなかったわ。
「くそっ!お前達!何をしているっ!?早くワシを守らんかっ!!」
大声で隣り散らす国王だけど。
側近達は動かなかったのよ。
「す、すみませんっ!私達にはどうにも出来ませんっ!」
「魔術師には勝てませんのでっ!」
「き、貴様等ーっ!!!」
私達に怯えて震えるだけの側近達のぶざまな姿を見た国王は深い絶望を感じた様子ね。
それでも騒がしく叫び続ける国王のすぐ側で、
和泉さんは不満げにロープを引きずり始めていたわ。
「あ~、もう!うるさいわね~。広場に行けば結果が出るんだから、大人しくしなさい!」
…うっわぁ。
仮にも国王を相手にして礼儀のカケラもないわね。
これでも私や御堂先輩は出来る限り丁寧な会話を心掛けていたんだけど。
和泉さんは雑な扱いで国王を引きずっていくのよ。
「黙ってついてくればいいの!」
…う~ん。
これはこれでどうなのかしら?
ロープで拘束した国王を容赦なく引っ張る和泉さんの扱いにはさすがに私達も焦りを感じてしまうけれど。
ひとまず今は触れないことにしたわ。
…たぶん、牢屋に閉じ込められたことを根に持ってるんでしょうね。
そう思うから何も言わずに和泉さんを見過ごすことにしたのよ。
「ひとまず僕達も行こうか…。」
「…ええ、そうですね。」
御堂先輩の意見に従って私も移動することにしたんだけど。
栗原さんだけは移動の前に魔術を展開しようとしていたわ。
「まあ、一応ね。」
謁見の間全体に魔術を展開した栗原さんの治癒の光のおかげで、
倒れていた衛兵達や陰陽師達が瀕死の重傷から復帰したみたい。
もちろん完治まで治療してあげることはできないけれど。
ひとまず動ける程度にはなったんじゃないかしら?
「しばらくは安静にしてた方がいいわよ~」
「「「「「………。」」」」」
気楽な態度で言い残してから無防備に謁見の間を立ち去る栗原さんだけど。
背後から襲い掛かろうとする人は一人もいなかったわ。




