強者だから
「お互いに言い分はあると思いますが、貴方には投降して頂きます。」
国王に対して話しかけたことで、
国王は憎しみを込めた瞳で睨みつけてきた。
「ふざけるなっ!セルビナは投降などしない!例え滅亡を迎えるとしてもだっ!!」
例え国が滅んだとしても敗北を認めるつもりがないらしい。
それほどの意志を示す国王に問い掛けてみる。
「それでは聞きますが…あなたは一体、何のために戦っているのですか?共和国を滅ぼすためですか?それともセルビナを守るためですか?」
「………。」
僕の問い掛けを聞いて言葉をなくす国王だけど。
それでも今は質問を続ける。
「多くの仲間を犠牲にして、多くの人々を巻き込んで、国を失って、全てを失うことが、あなたの理想なのですか?そうして本来守るべき人々に辛い想いをさせて、大切な人々を失わせることが貴方の判断なのですか?」
「………。」
僕の問い掛けに反論できない国王に、
今度は栗原さんが話し掛けていた。
「もう止めませんか?これ以上続けても誰も喜ばないと思います。きっと悲しい結末を向かえるだけです。」
…そう。
ここから先はただ殺し合うだけの戦いでしかないんだ。
だからもう争うべきじゃないと思う。
悲しいだけの犠牲なんていらない。
悲しいだけの未来もいらないんだ。
「敗北を認めてください。そしてどうかこれから先の未来を考えてください。争うことではなくて分かり合う努力をしてください。その先にはきっと…誰もが望む幸せな未来があるはずです。」
ただただ平凡な日常。
そして笑い合える幸せな日々。
それはきっとあると信じることで、
栗原さんは国王と向き合っていた。
「未来を信じてください。そして私達を信じてください。疑って恐れるのではなくて信じて受け入れてください。そうすればきっと、その先にはあるはずです。誰もが願う本当の理想があるはずです。」
「…理想か。それは偽善だな。」
真剣な表情で和平を願う栗原さんの考えを国王は静かに否定していた。
「それはもはや夢物語さえも通り越した茶番でしかない。そんな理想などどこにも存在しないのだからな!」
「どうしてそう思うのですか?」
「…どうして、か?それはお前達が強者だからだ。」
「強者?」
「ああ、そうだ!!お前達は力を持っている!だから正義を語れるのだ!だが我等は違う!力を持たない我等はお前達の言葉を聞き入れるしかないのだ!お前達が示す意見に逆らう力を持たない我等は常に屈するしかないのだ!!」
「………。」
国王と言っても一人の人間。
ただの一般人だからこそ、
どう足掻いても魔術師には敵わない。
だけど魔術師は違う。
持って生まれた才能だけで世界を揺るがす力を持っている。
僕達が一国を相手にして勝ててしまうように。
一般人では決して叶わないことが、
魔術師にとっては指先一つで叶えられてしまう。
その絶対的な能力差がある限り、
一般人が魔術師に勝つことは出来ない。
その現実がある限り、
和平は永遠に叶わないと国王は考えているようだ。
「お前達には正義を語る力がある!だが我等にはそれがない!弱者として強者に従うしか道はないのだ!だが、それを認めることなど出来はしない!もしもそれを認めてしまえば、全ての者達が魔術師に従属する存在へと成り下がってしまうのだからなっ!!」
真に国民を想うからこそ、
国王は死を選択するつもりでいると宣言していた。
「例え死んでも降伏などしない!それが残された者達に示せる我等の正義なのだ!!」
世界を魔術師に渡さない為に。
世界を魔術師の好きにさせない為に。
「決して屈しはしない!それが我等に示せるただ一つの正義なのだからなっ!!」
正義のために命を懸けると宣言したんだ。




