歯止めが効かなくなる
《サイド:御堂龍馬》
みんなのおかげで謁見の間の制圧が成功したんだけどね。
フェイだけはまだ戦闘を止めようとはしなかった。
「さて、どうするつもりだ?」
「…くっ。」
全ての護衛が全滅したことで問い掛けるフェイに、
国王は焦りの表情を浮かべながらも睨み続けている。
「…バケモノ共め…っ!」
憎しみを込めた瞳で睨みつける国王だけど。
どれだけ強がったところで、
すでに国王の周りには僅かな側近しか残っていないんだ。
「死ぬか、投降するか、どちらでも好きなほうを選べ。」
選択肢を与えながらラングリッサーを構えるフェイは殺したいほど憎んでいるのか、
国王を前にして最後の選択肢を与えていた。
「お前が国王として選ぶ最後の選択だ。意地を通して死ぬか?全てを終わらせるために屈するか?お前はどちらを選ぶ?」
「ふざけるなぁ!!!」
フェイが与える選択肢に国王は意地を選ぶようだ。
「貴様等に屈するつもりなどないっ!セルビナは最後まで戦い抜くのみだ!!」
「…そうか。」
死が迫る状況でも戦闘継続を選んだ国王の選択を聞いたフェイが覚悟を決めてしまう。
「ならば死ね!」
戦争を止めないのなら生かす価値はないと判断してしまったようだ。
「消えろ…」
突撃の構えをとったフェイが国王を殺害しようとしている。
…まずい!
「待つんだっ!!!」
床を破壊するほどの勢いで踏み込んだフェイに気付いた僕は慌てて二人の間に入った。
剣で槍を受け止めることで強引にフェイの攻撃を止めたんだ。
「待ってくれ、フェイ!」
「何故だ?何故、止める?」
「ここで国王を殺しても戦争は終わらないからだ!それよりも国王に停戦を決断させるべきだ!!」
国王を殺せば本当に歯止めが効かなくなる。
だけど国王が敗北を認めれば戦争は終わるんだ。
「国王を拘束する。そして敗北を認めさせる。それが最善の方法だ!!」
広場で戦闘を続ける共和国軍と陰陽師軍の戦いを止めるためには国王の協力が必要だった。
「国王は僕達が説得する!だから武器を下げてくれ!」
「………。お前はその男を許すのか?」
必死に願う僕を見ていたフェイは、
不満そうな表情を見せながら僕に問いかけてくる。
「多くの仲間を殺して、今もまだ自らの責任を知ろうとはしない男を庇うのか?」
「ああ、そうだ!」
怒気を含んだフェイの問い掛けに臆することなく答える。
「僕は誰も憎みはしない!!みんなそれぞれの想いを信じて動いているだけなんだ!」
そしてその想いを否定する権利は僕達にもないはずだ。
例えどんな理由があるとしても。
例えどんな事情があるとしても。
だからといって人を殺しても良い理由にはならないから。
「争いからは何も生まれない。殺し合う限り戦いは終わらない。だから僕達で終わらせるんだ!」
憎しみの連鎖を止めるために。
誰かが悲しい想いをするだけの辛い結末を避けるために。
僕はフェイに願い続ける。
「お願いだ、フェイ。もう誰も殺さないでくれ…。」
それが戦争を引き起こした国王であっても。
それが仲間を殺した張本人であったとしても。
「…許してあげてほしいんだ。」
それが僕達の願いだった。
僕も、栗原さんも、成美ちゃんも、鈴置さんも、黒柳所長も、誰もが平和を願ってる。
もちろん多くの仲間達も願ってくれているはずだ。
「頼む…。」
「………。」
まっすぐに見つめながら願う僕の想いを受け入れてくれたのか、
フェイは何も言わずに槍を下ろしてくれた。
「…少しだけ待つ。」
「ありがとう。」
「………。」
大人しく退いてくれたフェイと入れ代わりに、
栗原さんと成美ちゃんが駆け寄ってきた。
「今のはちょっと怖かったわね~。」
…あ、ああ、そうだね。
「だけどきっと…きっとフェイにも色々とあったんだよ。」
フェイの迫力に怯えながら駆け寄ってきた栗原さんに微笑みを向けておく。
僕達の知らない出来事。
フェイの心を苦しめる何かを想いながら、
僕達は国王に振り返ることにしたんだ。




