ロープを投げ捨てて
「立ち上がれ、御堂。お前にはその義務がある。」
…フェイ。
厳しい口調で手を差し延べてくれた人物に視線を向けて振り返る。
「フェイ…。きみが…やっぱりきみが真哉の力を…。」
その可能性は予想していたんだ。
総魔がフェイに託した想いは真哉しかないと推測していた。
…だけど。
だけどそれでも。
真哉のルーンを見た瞬間に。
これまで抑えていた感情が一気に吹き出してしまったんだ。
「やっぱりきみが真哉の力を受け継いでいたんだね…。」
何故、ここにフェイがいるのか?
何故、総魔はフェイを選んだのか?
色々と疑問は生まれるけれど。
そのどれもがどうでもよかった。
ただ真哉のルーンが見れたことが。
ラングリッサーを見れたことが…ね。
ただそれだけのことが、
僕にとっては何よりも重要だったんだ。
「フェイ…。」
涙を流しながら見上げる僕に、
フェイは静かに手を差し延べてくれている。
「立ち上がれ、御堂。北条の前で涙を流すべきではない。」
…あ、ああ、そうだね。
いつも前向きで明るく元気だった真哉に涙なんて見せられない。
…きっと真哉も困ってしまうだろうからね。
優しくも厳しく接してくれるフェイの言葉に頷いた僕は、
差し延べられた手を取りながら涙を拭って立ち上がった。
「ごめん、フェイ。」
「いや、気にするな。」
笑顔を見せてくれたフェイは、
ラングリッサーを回収してから周囲に視線を向けて宣言した。
「遊びはここまでだ。」
冷静に告げるフェイの威圧が謁見の間に緊張感をもたらしている。
だからだろうか?
「「「「「………。」」」」」
国王達は突然の出来事に戸惑っているように見える。
「一度だけ言っておくが投降するなら手出しはない。だが、戦うつもりならば容赦はしない!」
これまでに多くの仲間を殺されたからか。
フェイは恨みを晴らすかのように厳しい表情で宣言していた。
「戦うつもりならば殺す!それが友への手向けだ!!!」
ラングリッサーを構えながら戦いの意志を示したフェイの迫力は凄まじく、
味方であるはずの僕達でさえも恐怖を感じてしまうほどだった。
「…俺は御堂達とは違う。俺はお前達を殺すためにここに来た。大切な仲間達と共にな。」
堂々と告げるフェイの後方。
謁見の間の入口にはマリア・パラスとジェリル・ジョナとピーター・フロンドの3人が、
それぞれの手にルーンを構えながら突撃の構えを見せている。
「カーターを殺したことを許さないわ!」
…え?
カーター・フロンドが死んだのか!?
「結構いいやつだったんだからねっ!!」
怒りの表情を見せるマリアさんの隣ではジェリルさんもレイピアを構えている。
「カーターお兄ちゃんの分まで、僕も戦うんだっ!」
ピーターもナイフを構えてゆっくりと室内に歩みを進めてくる。
フェイを含めて新たに現れた4人の魔術師。
だけど援軍はそれだけじゃなかった。
マリアさん達の後方から、
さらなる味方が現れたんだ。
「…ったく~。私達もナメられたものよね。」
愚痴を言いながら謁見の間にたどりついたのは5人の生徒だ。
先頭を進む少女はグラディウスを構えながら進み出てくる。
「地下に閉じ込めた程度で終わりなんて思わないでよね〜。」
…無事だったのか!
怒りを感じさせる表情の和泉さんは、
国王に向かって宣言していた。
「ホンの一瞬でも隙を見せれば私達は何度でも立ち上がるわよ。拘束して地下に閉じ込めた程度で大人しくしてるなんて思わないことね!」
脱獄に成功したらしく。
和泉さんはわざわざ持ってきたロープを投げ捨てることで国王に無意味さを示したんだ。
「手足や口を封じられても魔術は発動できるのよ?まあ、意識を失ったフリはしたけどね。」
…あ、ああ、なるほど。
気絶したフリをしたことで陰陽師達の油断を誘ったのか。
そうして作戦に成功した和泉さんは、
他の牢獄に閉じ込められていた仲間達を救出してからここにたどり着いたらしい。
「見た目で判断してると痛い目をみるわよ。」
怒りを込めた瞳で優しく優しく微笑む和泉さんの静かな怒りによって、
謁見の間の空気がさらに一段階ほど重圧を増していった。




