そこじゃない
風を切りながら振り下ろされる剣と槍。
さらには後方から放たれた幾十もの矢が僕達に襲い掛かってくる。
…くっ!
反撃は出来ない。
逃げることも出来ない。
動くことさえ出来ない。
…みんなっ!!
背後でふさぎ込む成美ちゃん達に振り返る余裕さえもなく。
衛兵達の刃に視線を向けることさえできなかった。
…ごめん。
死を覚悟して目を閉じようとした。
その瞬間に背後から突風が吹き抜けたんだ。
…風?
何かが僕の傍を通り過ぎたと感じた直後に。
『ザクッ!!!』と音を立てながら、
僕達を捕らえる五紡の結界に一本の槍が突き刺さった。
そして一瞬にして結界を破壊してくれたんだ。
…動ける!?
結界が破壊されて自由を取り戻したのと同時に聞き覚えのある声が謁見の間に響く。
「ボルガノン!!!!!」
…これは!?
まさかっ!?
槍から発生した膨大な炎が、
しゃがみ込んでいた僕達の頭上に広がる。
そして周囲を取り囲む衛兵達に襲い掛かっていった。
「「「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」
一瞬にして広がった紅蓮の炎が衛兵達の体を飲み込んで、
放たれていた矢も全て灰に変えていったんだ。
「「「がっ!?あああああああっ!!!」」」
炎を浴びた衛兵達は混乱状態に陥ったようで炎を消すために暴れ回っている。
謁見の間の内部で炎に包まれたまま逃げ回る衛兵達。
そのまま力尽きる人や身動き一つとれずに意識を失って倒れる人もいるけれど。
僕達の周囲を取り囲んでいた数十名の衛兵達が一瞬にして全滅したのは間違いなかった。
だけど。
今の僕にとって重要なのはそこじゃない。
周囲の兵士達よりも。
壊れた結界よりも。
もっと重要なことがあるんだ。
…どうしてここにっ!?
五紡の結界が完全に崩壊して自由を取り戻した僕達に背後から誰かが駆け寄ってくる。
「無事か!?御堂っ!!」
全力で駆け付ける人物が誰なのかなんて確認しなくても分かる。
声を聞いただけでそれが誰なのかが分かるからだ。
だけど今の僕にとっては、
援軍の存在さえもどうでもよかった。
………。
拘束結界が消失して五紡の結界から解放されたにも関わらず、
僕の視線は『ある一点』から動かせなかったからだ。
絶対に有り得ない現実。
決して存在しないはずの物体から目を逸らせずにいた。
…何故なんだ!?
沸き上がる疑問が心を揺さぶり。
瞳から涙が溢れてしまう。
…もう二度と!
もう二度と見れないと思っていたのにっ!
…それなのにっ!!
目の前に存在するルーンが僕の心を揺さぶってしまう。
「真哉っ!?真哉ぁぁぁぁぁ!!」
抑え切れない感情が心と理性を打ち砕いてしまったんだ。
「真哉ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
亡くなった人物のルーン。
掛け替えのない親友のルーンを見た僕の心は一瞬で崩壊してしまっていた。
「真哉ぁぁぁ…っ。」
目の前に存在するルーンを眺めながら悲しみに暮れる僕に。
「…御堂。」
背後からそっと手を差し延べる人物がいた。




