ただの子供
「…ふむ。」
一言呟いた国王が僕達の傍へと歩み寄ってくる。
「ここまで来るからにはどんなバケモノかと思っていたが…来たのはただの子供か。」
ただの子供…か。
確かにここにいる人達から見れば僕達はまだまだ子供なのかもしれない。
どれほど実力があって一軍に匹敵する能力者であっても、
結界の内部では無力な少年少女でしかないからだ。
「わざわざ捕虜にするまでもないだろう。数を減らすために、お前達にはここで消えてもらおうか。」
………。
どうやら僕達を捕えるつもりはないらしい。
どうにかして説得してみたいとは思うけれど。
この場にいる人達を説得するのは難しいように思う。
…この場には陰陽師もいるけど。
彼等は国王の護衛が任務みたいだから、
前回の海戦に参加してなかったんじゃないかな?
広場で戦っている本宮源吾さんの部隊と別行動ということになる。
だとすれば栗原さんの説得も通じそうにない。
そして彼等は直接な戦闘に参加していなかっただろうから。
僕達の姿さえ知らないはずだ。
つまり。
この場にいる誰一人として僕や栗原さんに気付く人はいないということになる。
現状、僕達のことは共和国軍が送り込んだ暗殺者か密偵として考えられている可能性が高い。
…こうなると僕達が戦闘を止めに来たなんて話しても信じてもらえないだろうね。
どう考えても話し合う余地さえ存在していないように思うんだ。
「共和国軍が送り込むほどの実力者ならば生かしておいて得はあるまい。危険な存在は早々に始末しておくべきだろう。」
どうあっても僕達の存在を危険視するようだ。
国王の判断によって周囲を取り囲む衛兵達が一斉に武器を構え始めた。
すでに弓矢で狙われていたけれど。
剣や槍なども含めて、
あらゆる方角から刃を向けられてしまったんだ。
そんな周囲の様子を眺めながら必死に魔術を展開してみようと考えてみても、
結界の影響を受けていることで魔力が思うように操れなかった。
…ダメだっ。
魔力が途切れてしまう。
精神に影響を及ぼす結界内部にいるせいで、
魔術を完成させることは限りなく不可能に近かった。
…まだだっ!
僕はまだ死ねないんだっ!
戦闘を止める為に。
戦争を止める為に。
仲間を守る為に。
そして。
何よりも大切な成美ちゃんを守る為にはここで死ぬわけにはいかない。
…なのに。
魔術を封じられた現状では立ち上がることさえ出来なかった。
今は意識を保っているだけでも精一杯だった。
「殺せ!」
たった一言の指示。
国王の指示を受けた衛兵達が一斉に僕達に襲い掛かってくる。
周囲を取り囲まれた状況で迫る数百の刃。
それらを見つめながらも、
今は必死に願いを込めるしかなかった。
…総魔っ!
僕に力を貸してくれっ!
絶体絶命の状況において友に救いを願う。
その間にも衛兵達の刃は僕達に迫ろうとしていた。




