豪華絢爛
《サイド:御堂龍馬》
…ふう。
ひとまず内部に侵入できたね。
城門付近で囮役になってくれた和泉さん達が兵士達を引き付けてくれている間に、
僕と栗原さんと成美ちゃんと鈴置さんの4人は王城の2階まで進むことができたんだ。
「王城って無駄に広いわよね~。」
…ああ、そうだね。
内部の広さに驚く栗原さんの気持ちは僕にもわかる。
無駄に長い通路に、
ただただ広いだけの部屋が数多く並んでいるからだ。
しかも全ての部屋や通路には税金の無駄遣いとしか思えない豪華な装飾品が見られる。
…贅沢の極みだね。
テーブル一つ見ても高級感あふれる一品だし、
調度品の数々が豪華絢爛さを物語っている。
どこを見ても全ての家具が贅沢品で、
どれを見ても埃一つ存在しなかった。
…はあ。
思った以上に凄いね。
どこまでも豪華さを感じさせる贅沢な内装は、
通路を歩いているだけでため息が出るほどだった。
「踏むこと自体、気が引けるわよね~。」
…ははっ、そうだね。
現在僕達が走っている通路に敷かれている赤い絨毯さえも新品同様の綺麗さで汚れ一つ見つけられないんだ。
…これ一枚でどれくらいのお金が必要なんだろうか?
金の刺繍入りの絨毯。
素人目でも高級品なのは感じられる。
…これが王城の基本的な内装なのかな?
他国の王城を見たことがないから何とも言えないけれど。
どこを見ても豪華で無駄が多く思える広大な王城は根本的に共和国とは資金力が違う。
…これだけの資金力があれば、他にできることがあるんじゃないかな?
軍の強化とか。
町の発展とか。
色々と使い道があると思う。
…まあ、あまり軍を強化され過ぎても困るのは僕達だからこれで良かったのかな?
なんて他国の内部事情を考えても仕方がない。
「先を急ごう!」
ひとまず今は移動を優先することにする。
その道中ですれ違う侍女や執事達が怯えて逃げ出す姿が見られるけれど。
今は気にしないことにした。
…もうすでに城内に侵入したことは知られているはずだからね。
無理に口封じを考える必要はないし、
そんな時間があれば少しでも早く国王を捕獲したほうが良い。
「次の階を目指そう!」
「…え、ええ。」
王族を捜して先を急ぐことにしたんだけど。
あまりの内装の豪華さに栗原さんだけではなくて鈴置さんも驚いている様子だった。
「質素で何もないお城もどうかとは思いますけど…。実際に目にして見ると…贅沢過ぎてイライラしますね。」
…え?
あ、あー、うん。
あまり考えないようにしていたけれど。
やっぱりみんなも僕と同じ考えなのかな?
「そこはかとなく…全部、破壊してしまいたくなる衝動にかられます。」
…え?
あ、いや、そこまでは思わないよ?
「はぁ…。」
鈴置さんは深々とため息を吐いている。
「こういう所を見ると、いかに共和国が貧乏国か分かりますよね?」
…あー、うん。
まあ、そうだね。
税金の徴収だけではなかなか思うようにいかないせいで、
知事や学園の理事達の実費によって各町は辛うじて維持できている状況だからね。
とても装飾品にお金を費やす余裕はないと思う。
だからこそジェノスにもグランバニアにもお城なんて存在していないんだ。
強いて言うならグランパレスがお城代わりかもしれないけれど。
共和国の代表を勤めていた米倉さんにしても。
アストリアで亡くなってしまった米倉理事長にしても。
普段の職場は小さな役場の小さな一室でしかなくて、
豪華な建物や豪華な部屋が与えられていたわけではないんだ。
見栄や建前なんて一切存在しないし。
完全に質素倹約を重視する実務一辺倒の職場だから、
もちろん謁見の間というものも存在していない。
まあ、今だかつて他国から共和国に使者や王族が来たことがないということもあって、
特別に来賓を出迎えるような建物が存在しないんだけどね。
ただ一つの例外として魔術大会中に姿を見せたアストリアの一団だけがグランパレスに訪れたのみで、
それ以降もそれ以前も他国の使者が共和国に訪れたことは一度もないらしい。
だからこそ余計な見栄は必要ないし、
質素な自治に専念できていたみたいだけどね。
「この辺の高級感のある物を適当に持って帰れば、ちょっとは共和国の資金の足しになる気がしますよね?」
…あ、いや、それはちょっと、どうだろうか。
やることは窃盗だし。
どう考えても犯罪だよね?
美春さんの発言には苦笑いを浮かべることしかできなかった。
…まあ、成美ちゃんだけは物の価値が分からないせいか、王城の装飾を見ても何も思わない様子だけどね。
それでも鈴置さんはひたすら不満を感じているらしい。
「これだけ贅沢な生活が出来てるんだから、わざわざ戦争なんてしないで大人しくしていればいいのに…。」
…ああ、まあ、それはそうだね。
それは僕も思っている。
争わなければいけないほどお金に困っているわけではないだろうし。
領土に悩んでいるようにも見えないからだ。
ただ純粋に『魔術師が嫌い』という理由だけで戦争を仕掛けているとしか思えなかった。
「…と言うか、戦争に負けて自分達の国を滅ぼしてたら意味がないですよね?」
「それはそうだけど、そうしなければいけないほど僕達の存在が怖いんじゃないかな?僕達が他国や陰陽師軍を恐れるように、きっとこの国の人達はすぐ隣にいる僕達が恐ろしいと思うんだ。」
共和国とセルビナ王国は隣接してる。
それはアストリア王国やミッドガルムも同様だけどね。
世界を揺るがすほどの力を持つ魔術師という存在が側にいるという事実が何よりも恐いんじゃないかな?
共和国に争うつもりはなくても、
竜の牙のような武装集団が存在する限り、
魔術師への恐怖が消えることはないだろうから。
だからこそ戦争を決断したアストリアやセルビナの考えを否定することが僕には出来なかった。
「実際に僕達はたった数人で王城を制圧しようとしてる。それが出来てしまう魔術師を恐れる気持ちを否定することは出来ないよ。」
「………。」
僕の意見を聞いて言葉をなくした美春さんは反論する言葉が見付からないのか黙り込んでしまっていた。
…怒ってるのかな?
鈴置さんの気持ちを損ねてしまったのかと思ったけれど。
どうやらそうじゃないようだ。
「前方を塞がれてしまいましたね。」
…ああ、そっちか。
僕よりも先に敵の姿を発見したらしい。
鈴置さんの視線の先には、
3階への階段を塞ぐように布陣する衛兵達の姿が見えた。




