強制するものではない
「セルビナ王国の未来のために戦うしかないのだ。」
ここで本宮源吾達を庇えばセルビナ王国に未来はない。
命を救うことと引き換えに未来を奪うことになるからだ。
だがここで本宮源吾達を殺せば残された人々の未来は守られる。
それが本宮源吾達が命と引き換えに求める結末なのだからな。
「どうやら理解してもらえた様子だな。こちらの想いを察してくれたことに感謝する。」
「………。」
死を望みながら自軍へ引き返していく本宮源吾の後ろ姿を見送ってから、
俺も御堂君を連れて後退することにした。
「戻るぞ御堂君。この決戦だけは互いの力を示さなければならない。それがセルビナ王国の未来の為だからだ。」
「他に…他に方法はないのですか?戦わなくても…殺し合わなくても解決する方法はないのですか!?」
…どうだろうな。
懸命に別の方法を願う御堂君だが、
俺にもどうすれば良いかなどわからなかった。
「すまない、御堂君。それは俺にも分からない。」
ただ命を守るだけであればそれほど難しいことではないのだが、
未来を守るとなれば話は別だ。
「こればかりは共和国に属する俺達では解決できない問題になる。」
セルビナ王国の未来はセルビナ王国の人々によって作られていくものであり、
共和国の介入によって強制するものではないからだ。
そもそも他国からの介入を受けた時点でセルビナ王国は立場を下げることになるのだからな。
誇りを奪われて未来を失い、
ただ支配される属国に成り下がる。
そんな結末を避ける為には、
誰かが犠牲になるしかない。
あくまでも気持ちの問題だが、
この国には命がけで国を守った英雄がいたのだという事実を残す以外に国の体面を守る方法が存在しない。
「さすがに今回ばかりは打つ手なしだ。」
下手な救済はセルビナ王国の誇りを奪うだけだ。
「陰陽師軍の全滅が…セルビナ王国の未来を守るのだ。」
「僕には理解できません。」
…だろうな。
それが普通の考えだ。
…だが、な。
何事も常識で割り切れることばかりではない。
戦争という名の狂気の世界においては矛盾と絶望だけが残されることもある。
『国を守る為に戦って国を守る為に死ぬ』
そんな矛盾を抱えながらも戦う意志を示した陰陽師軍の胸中を思いながら、
俺達は共和国軍に戻ることになった。




