セルビナ王国の信頼
「何故ですか?何故降伏しないのですか!?多くの仲間を逃がして、一人でも多くの生存を願うのであれば、戦うことの無意味さが分かるはずですっ!!」
「………。」
懸命に問い掛ける御堂君だが、
本宮源吾は説得を受け入れようとはしなかった。
「…いいえ。私達が死ぬことで切り開ける未来があるのです。ぶざまな生を晒すよりも、死して願う未来の為に戦うしかないのです。」
「どうしてですか!?死んだほうが良いなんて、僕には理解できません!何故、生きることがぶざまだと決め付けるのですか!?死んで叶う未来なんてありません!生存を願うのであれば、この戦いは回避するべきですっ!!」
本宮源吾という人物が話し合いの通じる相手だと信じて停戦を願う御堂君だったが、
これはもはや水掛け論にしかならないだろう。
「まあ待て、御堂君。ここは一旦、落ち着くんだ。」
「ですが…っ。」
「今は何を言っても無駄だ。きみにはまだ分からないかもしれないが、彼等が求める死にはちゃんと意味があるのだからな。」
「それは…どういうことですか?」
「セルビナ王国の意地と誇りを貫き通す為だ。」
戸惑う様子の御堂君に、
彼らの考えを伝えることにする。
「こういう言い方は極端かもしれないがな。軍隊が逃げ出した国を誰が助けてくれると思う?」
「…え?」
本来なら国を守るべき軍隊が国の守りを放棄して滅亡を認めたとなれば、
セルビナ王国の信頼は完全に失われることになるのではないだろうか?
「軍隊が逃げ出した国において残された人々は誰を頼りにすれば良い?」
「………。」
俺の問い掛けによって御堂君は言葉をなくしていた。
だが、俺の言いたいことは伝わりつつあるようだ。
「誰かが示さなければならないのだ。この国には命を賭けてでも国を守ろうとする人物がいるのだという事実をな。」
例え一軍であっても命を賭けて戦い抜けば、
セルビナ王国は最後の意地と誇りを守り抜くことが出来る。
「そのために証明しなければならないのだ。」
全てはこの国の為に。
そしてこの国に住む全ての人々の為に。
「セルビナ王国の誇りと信念を最後まで示さなければならないのだ。」
だからこそ本宮源吾はセルビナ王国の誇りを守り抜く為に自らが犠牲となる道を選んだはず。
「分かるか?」
「………。」
何も言えなくなってしまった様子の御堂君に話を続けていく。
「全滅が確定しているからこそ戦わなければならないのだ。出来なければセルビナ王国は周辺諸国の笑い者になってしまうだろう。」
軍隊が逃げた国に同情する者はいても、
その判断に正義を感じる者はいない。
おろかな敗戦国として笑い者になる事態は避けられない。
だがもしも本宮源吾達が犠牲になれば、
セルビナ王国は最後の意地を見せることが出来る。
この国に住む人々に。
他国に嘲笑われるだけの絶望の未来ではなく、
死力を尽くした英雄の民として希望を残すことが出来るのだ。
「互いに避けられない戦いがある。そして今この時が…その戦いなのだ。」
…もちろん。
戦闘を避けたいと願う思いはあるがな。
それでもついに訪れた避けられない戦いに対して、
今は苦渋の決断を下すしかなかった。




