帰ってきていない
《サイド:黒柳大悟》
…ふむ。
敵はまだ降伏を認める気がない様子だな。
王城を目前とした広場に軍を展開してから、
龍馬達と共に陰陽師軍の動きを警戒しているのだが。
セルビナが降伏を認める様子はまだ見られない。
一応、待機の間に幾度も使者を送ることでセルビナ軍に敗北を認めるように降伏勧告を行っていたのだが、
こちらからもちかけた停戦交渉は思うように進んでいなかった。
…まあ、これは国の存亡を賭けた重要な一戦だからな。
そうそう簡単に敗北を認めることはないだろう。
だからと言って俺達と戦って勝てるような見込みはないはずだ。
…籠城でも行うつもりだろうか?
最初の使者を派遣してからすでに1時間が経過している。
そしてこれまでに送った使者の数は計8名なのだが、
そのいずれも帰ってこなかった。
…とは言え。
魔力の波動は感知できるからな。
殺されてはいないはずだ。
だからと言って無事である保証はどこにもないのだが、
使者を殺せばその時点で交渉は終わることになってしまう。
自らが窮地にある現状で、
そんな無謀な行動には出ないと思うが不安は尽きない。
…そろそろ見切りをつける頃だろうか?
セルビナが降伏勧告に応じる可能性はないと判断して戦うべきかもしれないと考え始めたのだが。
その直後に王城の門が開かれた。
「ついに降伏を認めたか?」
疑問を感じながら数歩前に歩み出る。
…と、同時に。
「ごめん成美ちゃん、栗原さんを頼むよ。」
御堂君は背負っていた栗原君を常盤君に預けていた。
どうやら俺の護衛を務めるつもりのようだ。
栗原君を預けた御堂君が俺と共に歩み出る。
「これからどうなるのでしょうか?」
…さあ、な。
その答えが知りたいのは俺も同じだ。
だから今は希望的観測を答えるしかなかった。
「期待としては降伏を認める行動であれば良いのだがな。」
そうでなければ困るのだが、
まずは広場を移動してみるしかない。
「まずは向こうの言い分を聞こうか。」
話し合うために部隊から離れた俺達の視線の先に、
王城の内部から続々と陰陽師軍が姿を現した。




