楽勝な感じ
《サイド:鈴置美春》
…陰陽師軍の姿が見えないわね。
どこかに潜んでいるのかしら?
それとも王城の内部で待機しているのかしら?
…まあ、どちらにしても戦闘は避けられないでしょうけどね。
今だに姿を見せない陰陽師軍だけど。
私達が布陣する広場の周辺はすでに人の気配がなくて、
王都の住民達は巻き添えを恐れて離れた場所に避難しているわ。
「ここにいるのは警備の衛兵だけみたいですね。」
「そうみたいね~。」
城門を眺めながら呟いてみたことで和泉さんが問い掛けてきたのよ。
「強行突破で楽勝な感じがしない?」
…う~ん。
…どうかしら?
私はそうは思わないけれど。
最小限の警備を見た和泉さんは簡単に勝てると思うみたい。
「守備についている衛兵も怯えてる雰囲気があるし、一気に攻め込めば制圧出来る気がするのよね~。」
…そうかしら?
気楽に考える和泉さんに苦笑いを返してしまったわ。
「まあ、私達が決めることではないので何とも言えないですけどね。」
「そうなんだけどね~。」
私としては黙って指示に従うしかないと考えていたんだけど。
何故か私達の会話に黒柳所長が割り込んできたのよ。
「ここでじっとしているわけにもいかないだろう。突撃はするが、どういう布陣が良いと思う?仮にも陰陽師軍が姿を隠している状況で無防備に突き進むわけにはいかないからな。それ相応の策を考える必要があるわけだが…。」
…ん~?
作戦ね~。
「主力を先行させて暴れれば陰陽師軍をあぶり出せるかも?」
…え〜〜〜っと。
「…ふむ。」
和泉さんの曖昧な作戦を聞いた私と黒柳所長は苦笑いを浮かべてしまったの。
「まあ、それも一つの方法だとは思いますけどね。」
あくまでも否定はしないわ。
それでもやんわりと和泉さんの作戦を却下してから黒柳所長に進言することにしたのよ。
「部隊を散開して王城を包囲したあとに魔術による城壁の破壊が最も安全な作戦だと思います。」
「なるほど、それも一つの方法だろうな。」
突撃の為の道を増やしながらセルビナ軍を削っていくことが最良の作戦だと考えた私の意見に黒柳所長は同意してくれたの。
「だが、俺なら別の方法を考える。」
もっと確実に。
もっと安全に王城を制圧する作戦。
…それは?
「王城を吹き飛ばすことだ。」
…うわ〜〜〜~。
もっとも単純で残酷な作戦だったのよ。
内部に潜む全ての人を巻き込んで王城を消滅させることが最善だと言われてしまったの。
「御堂君や鈴置君の力なら不可能ではないだろう?」
「…え?でも、それだと犠牲者が…」
多数の死者が出ることになるわ。
「もちろん実際に実行する必要はない。要はそれが実現可能であると理解させることが出来れば良いのだ。」
…あ、ああ、そういうことね。
その気になれば王城を吹き飛ばすことが出来るという力を示せれば、
王城の内部に身を潜めることが危険だと気付かせることが出来るという意味よ。
「突入するのは戦闘が始まってからだ。まずはセルビナ王国に降伏勧告を行う。その反応を確認してから篭城の無謀さを実感させる。それでもまだ降伏を認めないならば…まあ、その時は戦うしかないだろうな。」
あくまでも説得が優先なのは変わらないみたい。
一人でも多くの命を守る為に。
一人でも多くの犠牲を減らす為に。
まずは交渉が行われるようね。
「力による制圧は二の次だ。まずは説得を行う。分かってもらえるかな?」
「あ、はい。」
「はぁい…。」
緊張した表情で答える私と、
気の抜けた声で答える和泉さん。
そんな私達から離れた黒柳所長は御堂先輩の隣に移動していたわ。
「それではまず降伏勧告から始めようか。」
「はい!」
無意味な戦闘を避ける為に。
セルビナ王国に対して降伏勧告が行われることになったのよ。




