残る想いは
《サイド:黒柳大悟》
…これがセルビナの王城か。
ここを制すればセルビナとの戦いは終わるはずだ。
…長かったようで短かったようにも思うな。
海戦を乗り越え。
港を制圧し。
王都に乗り込んできた。
…ここが正念場だ。
王都の内部を進軍していた俺達は現在、
王城を目前とした広場において部隊を布陣させている。
「ついにここまで来ましたね」
「ああ、そうだな。」
疲労困憊の栗原君を背負いながら王城を見上げる御堂君も色々と思うことがあるのだろう。
「総魔は…たった5人で王都を戦い抜いたんです。」
…ああ、天城君か。
「彼はアストリアの王都を壊滅させたのだったな。」
「はい。兵器を暴走させて王都を攻撃したそうです。」
…自爆覚悟の攻撃か。
彼らしい行動だとは思うな。
まあ、やるべきことは違うが、
ここを制圧できればセルビナ王国は事実上、
共和国の支配下になるのだ。
王都を制圧し。
王城を制圧し。
王族を制圧できれば、
セルビナ王国の敗北が確定する。
すでに海軍と陸軍の両軍が敗北を認めている現状。
残る敵は陰陽師軍だけだ。
ここで陰陽師軍を退けることさえ出来れば、
もはやセルビナ王国に抵抗する戦力は存在しない。
「これが最後の戦いだな。」
王城の制圧さえ出来ればセルビナ王国との戦争は終わる。
…あと少しだ。
御堂君がいてくれたからここまで来れた。
御堂君が生きていてくれたから共和国は救われた。
御堂君が戦ってくれたから多くの命が救われたのだ。
互いの数を減らすだけの消耗戦を回避してここまで軍を進められたのは御堂君の存在が大きい。
「天城君が遺した意志はきみの中に残っているはずだ。」
それは魂や力などではなく、
確かな意志として宿っているのだと思っている。
「何かを残すのではなく、きみを導くこと。それが天城君が遺した希望なのかもしれないな」
「…ええ、そうかもしれませんね。」
御堂君を生存させて未来への道を残すこと。
それこそが天城君が遺した希望だと推測していた。
「まあ、個人的な意見でしかないがな。」
…事実がどうかはこれから分かるだろう。
全てが終わる時に御堂君の手に残る物は何なのか?
その答えが明らかになる時は近いと思っている。
…まずはこの戦いを終えるべきだがな。
先のことを考えるよりも、
目の前にある城門へと視線を向けることにした。




