死してもまだ
「まあ、国王は認めないかもしれないがな。」
それでも幻夜は思うようだ。
「あの方の意志は今もアルバニア王国に残っている。俺やお前がそうであるように、多くの者達があの方を慕い、あの方の生存を願っているのだ。」
…生存か。
それほどまでに大きな影響を与えているのだな。
「国を追われても…死してもまだ英雄か。」
「真実を知る者はいないからな。誰もがあの方の生存を願い、あの方が王都に戻る日を待ち望んでいる。例えそれが叶わない幻想だとしても、誰もがあの方を求めているのだ。」
「…だとしたら、大変だろうな。」
死者を相手に比べられる苦難ほど辛いことはない。
「決して越えられない壁を越えなければならない苦悩は人の心を蝕むだけだ。」
「ああ、だからこそ俺や香澄様がいるのだ。あの方の代わりを務める為に、そしてアルバニア王国を守る為に俺達がいるのだ。」
天城総司がアルバニア王国を去ったあの日から、
幻夜は朝倉香澄と共にアルバニア王国を守ってきたのだろう。
それゆえに。
唯の名を次ぐ少女を誰よりも大切に扱っているようだ。
「彼女こそが唯様の生まれ変わりなのだと俺達は信じている。」
…生まれ変わりか。
戦場を駆け巡る少女を眺めながら小さく息を吐いた。
「これも全て運命か…。」
俺が知る御神唯は天城総司と共に死亡している。
その背景において複雑な関係があることも理解しているが、
その辺りの事実に関しては幻夜にさえも伝えていない。
それはただ一人。
俺だけが知る真実なのだ。
何故、天城総司が小さな漁村を生涯の地に選んだのか?
何故、天城総司はその村に留まることを選んだのか?
その理由は今となっては俺しか知らない。
「…出来るものならば会わせてやりたかったものだな。御神唯と天城総魔を…。」
生まれ持った血筋において深い関わりを持つ二人の再会は一度も叶うことがないまま終わりを迎えていた。




