国旗
竜道寺を倒すために指輪の封印を解除して真の力を解放しようとしたのだが、
指輪を抜き去るよりも先に聞き覚えのない男の声が戦場に響き渡った。
「総員、突撃を開始せよ!!!」
…誰だっ!?
ここは敵地で味方はいないはずだ。
そしてミッドガムル軍は桜井由美の部隊が相手をしているはず。
かと言って竜の牙の増援部隊でもないようだ。
少なくとも魔力の波動が感じられないからな。
…どこの部隊だ!?
推測さえ出来ないのだが、
男の声が戦場に響き渡った直後に。
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
数え切れないほどの大部隊が戦場になだれ込んで来た。
「「「進めーーーっ!!!」」」
「「「敵を殲滅しろーーっ!!!」」」
大声で叫びながら戦場に突撃してきた大部隊を確認してみる。
…どこの部隊だ!?
各所に見える旗印。
謎の部隊が掲げる軍旗は陰陽の紋だった。
…なっ!?
陰陽師軍だと!?
同時にアルバニア王国の国旗も見える。
…何故だっ!?
何故この状況でアルバニア王国がっ!?
戸惑う俺の視線の先で、
陰陽師軍が3つに分かれていく。
一つは桜井由美が率いる共和国軍とセルビナ王国に派遣されたミッドガルム軍に流れ。
もう一つは竜道寺が率いる竜の牙が混戦する砦の南部に割り込んでいくのが見えた。
そして砦に向かわなかった3つ目の部隊が、
俺達が戦っている国境南部の戦場に迫ろうとしている。
「敵を殲滅しろっ!!!」
誰かの声が響き渡り、
戦場が一気に大混乱に陥った。
「くそっ!この状況でアルバニアまで動くのかっ!!」
突撃して来る陰陽師軍を見て焦りを感じる俺の傍では竜道寺も表情を変えている。
「ちっ!あと一歩で米倉宗一郎を殺せるところで邪魔が入るか…っ。」
さすがの竜道寺もアルバニアの陰陽師軍と戦って無傷で勝てる自信はないようだな。
「ここは一旦、退くべきか…?」
万が一にも敗北することがあれば秘宝の探索どころではなくなるからだろう。
竜道寺は退路を確認している様子だった。
「あの男は危険すぎる…。」
…あの男?
それが誰のことなのかが分からないのだが、
竜道寺はこの場から撤退しようとしている。
「今回は見逃してやろう。だが次は逃がしはしない。」
再び戦う日がくることを宣言してから、
竜道寺は戦場から離脱してしまう。
「撤退するぞっ!!」
竜道寺の言葉をきっかけとして、
陰に潜んでいた伝令部隊が退却の合図を出していく。
「撤退だー!!!!」
大声で叫びながら大規模魔術を上空に展開する伝令部隊の合図をきっかけとして、
共和国軍を襲撃していた竜の牙の部隊が一斉に退却を始めていった。
…逃げてくれたのか?
ひとまず全滅の危機は回避できたようだ。
…とは言え。
これはまだ一時的な延命措置でしかない。
竜道寺が率いる竜の牙が戦場から離脱してくれたが、
アルバニア王国の陰陽師軍が接近しているからな。
最悪の状況なのは何も変わらない。
…くそっ!
さすがにこの状況は無理か!
竜道寺の魔剣で貫かれた体の治療も間に合わず。
多くの仲間達も倒れている現状だ。
俺達に陰陽師軍を迎撃する力なんて残されていなかった。
「俺と米倉さんだけで、どこまで絶え凌げるか…。」
動けるのはたった二人。
それ以外は全員瀕死の重傷で、
どう考えても戦力にはなりえない。
「勝ち目はないな…。」
不安だけを感じながら陰陽師軍に向き合う俺の目前にまで陰陽師軍が接近してくる。
「ちっ!こうなったら仕方がねえ!最後まで徹底的に戦い抜くだけだ!!」
再び精霊を召喚しながらナイフを構えて陰陽師軍に立ちはだかる。
ルーン『ライトニング』を握りしめて徹底抗戦を覚悟した。
「一人でも多くの陰陽師を道連れにしてやるっ!!」
陰陽師軍に対して単独での突撃を試みる。
戦場で倒れている多くの仲間達を守る為に、
陰陽師軍の攻撃を受ける前に迎撃を行おうとしたのだが。
「…待て!!」
意識を失った上矢遥を後方へと避難させていた米倉宗一郎が慌てた様子で駆け寄ってきた。




