サンダーバード
「何っ!?」
攻撃が空振りしたことで、
竜道寺は目の前で消えた俺を捜して周囲を確認している。
その様子を眺めながら瞬時に背後に回り込む。
「お前を殺す!!」
「!?」
背後に回り込んだ俺の気配を感じて即座に振り返る竜道寺だが、
すでに俺はそこにはいない。
「何だとっ!?」
戸惑う竜道寺に再び背後から迫る。
「死ねっ!!」
ルーンを生み出して斬りつけた。
「ぐぁぁぁぁぁっ!!!」
背後を斬られた竜道寺が崩れ落ちて膝をつく。
まだまだ致命傷には遠く及ばないが、
動きを止めた竜道寺の首を狙って再び攻撃を仕掛ける。
…死ぬまで斬り続けてやる!!
帯電して火花を撒き散らすナイフを構えて竜道寺の首を狙う。
「地獄に堕ちろっ!!」
研ぎ澄まされた動きで暗殺を狙ってみたのだが、
さすがに一撃必殺とはいかないようだ。
「吹き飛べっ!!!ダークネス・ファング!!!!」
収束した闇が一気に爆発して、
竜道寺もろとも俺の体を吹き飛ばしてきた。
「ぐっ!!!ぅぅ!!!」
「ちっ!!!!」
痛みを堪える俺と竜道寺。
竜道寺は即座に治療を行っているが、
俺は気力だけで痛みを堪えるしかない。
…さすがに回復魔術の優劣はどうしようもないな。
痛み止め程度の治療しか出来ない俺に振り返った竜道寺がようやく俺の姿を捉えたようだ。
「…何をした?」
聞かれて答える義務はないが、
時間を稼いで得をするのはこちらも同じだからな。
今は会話を引き延ばすのも良いだろう。
「…気が付いたんだよ。俺の潜在能力にな。」
これまでは一切のきっかけがなかったが、
今回の戦いにおいて一つの可能性を見出すことが出来た。
「里沙のおかげで目が覚めたってところだけどな。」
きっかけは里沙の想いだが、
基盤になった力は別の存在のおかげとも言えるだろう。
「俺はずっと考えていた。もっと力が欲しい。もっと強くなりたいと…ずっと考えていたんだ。」
純粋な力を求めるのなら炎が相応しいのかもしれないが、
大塚義明や里沙の力を目にした俺はそれ以上の力を求めていた。
そしてついに一つの可能性を目にしたんだ。
それは米倉宗一郎のイクシオンであり、
笹倉美和子のライトニングソウルでもある。
「雷だ。雷こそが俺の求める力だと気付いた。」
速さと力を兼ね備えた属性。
雷の力なら竜道寺の防御結界すらも突き抜ける可能性があると実証されたからだ。
「俺は答えにたどり着いた。そしてそこから自らの能力に気付いた。ただ、それだけだ。」
答えを告げてから右手に魔力を込める。
「ようやく俺も見付けたんだよ。」
小さく呟いて願いを込める右手に雷が収束していく。
「見せてやるよ竜道寺。これが…これが俺の精霊だっ!!!」
知識を技術に変えて召喚する精霊。
俺が願う相棒の姿はこれしかない。
「サンダーバード!!!!」
里沙の炎の鳥と対を成すもう一つの鳥。
雷という属性を持った精霊は鳥の姿になって俺の頭上に姿を現す。
「滅びろっ!竜道寺っ!!」
雷鳥を飛翔させる。
ただそれだけで風を切り裂きながら竜道寺に襲い掛かっていく。
「これが俺の力だ!」
「ふん。ナメるなっ!!」
魔剣を構えた竜道寺が雷鳥に切り掛かった。
その直後に雷鳥は真っ二つに分断されてしまう。
…まじかっ。
強すぎるだろっ!?
どう足掻いても攻撃が通じないことで焦ってしまったのだが、
戦いはまだまだ始まったばかりだ。
「次は当ててやるぜ!」
「ふっ。少々力が増した程度で俺に勝てるなどと思わないことだな。」
余裕の態度を見せる竜道寺に一気に距離を詰め寄る。
「勝てなくても足止めは出来る!」
時間さえ稼げれば米倉宗一郎と上矢遥の救助によって仲間達が助かるかもしれないんだ。
「お前を足止めできればそれで良い!!」
「…ふん。足止めか。確かにお前が万全な状態であれば、数分なら時間を稼げたかもしれないな。だが、弱り果てた今のお前に俺を止めるほどの力はない。」
…ちっ。
確かにまだ厳しいか。
回復魔術を得意としない俺には体を治療する術がないからな。
溢れ流れる出血とこれまでに蓄積した疲労が俺の動きを鈍らせている。
「俺を殺すにはまだ力が足りん。」
再び宣言する竜道寺の言葉を聞いて、
無意識のうちに指輪に視線を向けていた。
…今なら封印を解除できるか?
真の力に覚醒すれば雷鳥もルーンも完成するはずだ。
手元にあるナイフも便利な武器だとは思うが、
未完成のルーンよりも完成したルーンのほうが役に立つのは間違いない。
その可能性に気付いて封印の指輪を抜き取ろうとした瞬間に。
さらなる事態が俺達に迫ろうとしていた。




