もう一人いれば
《サイド:上矢遥》
…美和子の想いを無駄にはしないわ!!
溢れる涙を拭って。
憎しみも悲しみも乗り越えて。
美和子の想いを受け継いで走り出す。
「これで終わりよっ!!!」
新たに展開する魔術は美和子が極めたブラストサンダー。
美和子の想いを受け継いだ私は雷によるトドメを狙ったの。
「美和子の力を思い知りなさいっ!!」
残る魔力の全てを込めて雷を発動させる。
その瞬間に巨大な雷球が目の前に現れて、
一筋の膨大な雷撃が生まれたわ。
「ブラストサンダー!!」
敵の体を飲み込む強力な一撃。
穴が開いた結界をこじ開けるように叩き込んだ雷撃によって、
直撃を受けた敵の悲鳴が戦場に響き渡ったのよ。
「ぐぁぁぁぁぁっ!!!!!」
貫かれた腹部の穴から全身に広がる雷撃は致命傷と言えるはず。
「くっ…!ぅぅっ!!」
消し飛びそうになる意識を気力だけで留めているのか、
回復魔術を展開しようとしている姿が見えるわ。
…これは厄介ね。
本当なら回復魔術を妨害するべきなんでしょうけど。
ルーンを持たない私には無詠唱で発動できる敵の魔術を阻止することは出来ないのよ。
…せめてもう一人いればっ。
波状攻撃を仕掛けられれば敵の動きを止めることが出来るのに、
まともに戦えるのが私だけだから他の誰かに協力を求めるのは不可能なのよ。
…まずいわ。
聖なる光が敵の体を包み込んで、
貫かれた腹部の穴が瞬時に塞がってしまう。
そうして体制を整えて魔剣を構える敵の体には、
すでに美和子が遺した傷痕は存在していなかったのよ。
「…ふう。油断したことは素直に認めよう。」
美和子の攻撃に対応できなかったことを素直に認めているけれど。
体に宿る魔力は加速度的に回復しているようね。
「お遊びはここまでだ。もはや手加減はしない。」
幾度となく攻撃魔術を展開していながらも。
体の治療に多くの魔力を消費していながらも。
悠然と魔剣を構えて見せたのよ。




