悔し涙
《サイド:長野淳弥》
…ぐっ!?
しまった!!
「敵に背後を見せるなど…お前らしくない失態だな?」
…がっ!?
ああああああぁぁぁぁ!!
俺の背中に突き立てられた刃を竜道寺が深く深く押し込んでくる。
「づあああああああああっ!!!!!」
…く、そっ!
腹部から突き出る魔剣を見つめながら、
ゆっくりと倒れ込む。
大地に膝をついて倒れる体から少しずつ魔剣が抜けていくが、
その激痛が俺の精神を確実に破壊していった。
…ち、ぃっ!!
手も足も出せないままぶざまな敗北を曝してしまったんだ。
目の前で米倉宗一郎が倒れ。
大塚義明も助けられず。
百花と芹澤啓輔も救えず。
俺を庇おうとした里沙を守ることさえ出来ないまま敗北してしまった。
…すまない、みんな。
…すまない、里沙。
誰一人として庇えず。
誰一人として守れず。
誰一人として救えないまま。
竜道寺の足元に倒れ伏す。
…すまない、姉貴。
…すまない、雪。
俺は何も出来なかった。
溢れる涙。
それは悲しみではなく悔し涙だ。
守るべき米倉宗一郎を守れず。
共に戦ってきた仲間を守れず。
何も出来ないまま死の危機に直面している自分自身に対する悔しさだった。
…くそっ!
自らの弱さを呪い。
自らの弱さを憎み。
瞳から涙をこぼしてしまう。
…すまない、御堂。
俺は何も出来なかった。
身動き一つ取れず。
血まみれで倒れて謝ることしか出来ない。
そんな俺の側を竜道寺が通り過ぎようとしている。
「そこで見ているがいい。全てが失われ行く絶望の瞬間をな。」
俺を放置した竜道寺は米倉宗一郎の治療を行う上矢遥と笹倉美和子に近づこうとしている。
その歩みを俺は声も出せずに見つめることしか出来なかった。
…ま、待てっ!
止めろっ!!!!!
心の中で必死に叫んでみるが、
当然、竜道寺には届かない。
「次はお前達だ。」
治療を優先する二人に魔剣を向ける竜道寺の殺気を感じた上矢遥と笹倉美和子は焦りの表情を浮かべながらも互いに顔を見合わせていた。




