援軍は来ない
《サイド:上矢遥》
「美和子…。」
「遥…。」
お互いの名前を呼び合いながら二人で覚悟を決めたわ。
「あとはお願いね。」
美和子に米倉元代表を託して静かに立ち上がる。
「私が時間を稼ぐわ。その間に美和子は米倉元代表を連れてここから逃げて。混合部隊に合流できれば、きっと他のみんなが助けてくれるはずよ。」
ここにいる戦力が全滅でも、
北側にはまだまだ多くの仲間がいるのよ。
桜井学園長が率いる部隊に合流できればこの状況を打開することも出来るはず。
そんなふうに考えていたんだけどね。
竜道寺は焦るどころか冷たい笑みを浮かべていたわ。
「残念だが、それは無理だろうな。」
「…それはどういう意味かしら?」
「何故、俺が一人でここにいるのか?お前には分からんか?」
…一人で?
そう言えばそうよね。
仮にも敵の幹部が一人で行動してることが異常なのよ。
「…仲間は別の場所にいるということかしら?」
「ああ、そうだ。俺が率いていた部隊は別の場所にいる。お前は不自然だと考えなかったのか?何故、共和国軍はこちらに応援に来ないのか?とな。」
…っ!?
「まさか…っ!?」
「…ようやく気付いたか。だがすでに手遅れだ。竜の牙は共和国軍に攻撃を開始している。その為に共和国軍に合流することも、共和国軍が合流することも出来はしないのだ。お前達はすでに孤立しているのだからな。」
「…くっ!」
そこまで考えが回っていなかったわ。
現在の状況に思考を巡らせるのが精一杯で、
周囲の状況まで見えていなかったのよ。
「援軍は来ないということね…。」
竜道寺の話を聞いて悔しさを感じてしまう。
ここからの離脱を封じられて。
仲間との合流を封じられていることをはっきりと思い知らされたからよ。
「あえて宣告しておこう。すでに時は満ちた。もはやお前達に助かる術はない。」
…本当にもう。
最後の希望が断たれたのね。
仲間との合流すら出来ないのよ。
その事実に絶望を感じるしかなかったわ。
…最悪の状況ね。
月が見える日を選び。
共和国軍が弱る隙を狙い。
私達が孤立する瞬間を突いて。
敵は最善の布陣を整えてきたの。
竜の牙にとっては望むべき状況でも、
共和国にとっては最悪の状況だったわ。
…こうなったらもう、戦って勝つ以外に助かる方法はないわね。
全てが敵の思惑通りに進んでいて、
私達は絶望的な状況に追い込まれているのよ。
あらゆる攻撃が通じない敵を相手にして、
勝つこと自体が不可能な目標だけれど。
それでも他に道はないわ。
「あなたを倒して全員を救出してみせる!」
「やってみるがいい。出来るものならば。」
最後の話を終えたことで、
私も戦いを挑むことになったのよ。




