雑魚同然
《サイド:芹澤里沙》
「淳弥を虐めるんじゃないわよっ!!」
怒鳴り声と共に、
ありったけの魔力を精霊に注ぎ込む。
「淳弥を虐めるのは私の役目なんだから、勝手なことはさせないわっ!!!」
炎の鳥を敵に突撃させる間に淳弥を救出しようと思ったんだけどね。
最初の一歩を踏み出す前に、
敵は私に目標を変えていたわ。
「…邪魔をするな。」
魔剣を振り上げながら精霊に狙いを定めてきたのよ。
「…消え失せろ。ブラッディ・ムーン!!!」
勢いよく振り抜いた刃の軌道に沿って生まれる深紅の衝撃波があっさりと炎の鳥を二つに切り裂いて私自身にまで襲い掛かってくるの。
だけどここで逃げ出すつもりはないわ!
…負けないっ!!!
必死の想いでヴァンガードを構えて攻撃に耐えようとしたんだけどね。
「里沙に手出しはさせないわよ!」
「俺の女に手を出すなと言ったはずだっ!!」
私の左右から百花と兄貴が助けにきてくれたのよ。
それぞれにルーンを構える二人。
百花の手には『プリンセス・ガード』
兄貴の手には『セーブ・ザ・クイーン』
異なる形の二つの聖剣が私の正面で交差してた。
「私の親友を傷付けようなんて、千年早いのよ!」
「里沙を殺せるのは俺だけだ!!お前ごときに手出しはさせん!」
それぞれの想いを力に変えて、
二人が深紅の衝撃波に切り掛かる。
「消えなさいっ!!」
「消え去れっ!!」
限りある魔力だけで防衛を試みる二人の聖剣が深紅の衝撃波を迎撃してくれたの。
『ズバンッ!!!!』と、十字に切られた衝撃波。
二人の攻撃のおかげで深紅の衝撃波は消滅したのよ。
「…ほう。」
殺すつもりで放った衝撃波が防がれたのに、
感心している様子なのは余裕の表れなのかしら?
百花と兄貴の二人が起こした小さな奇跡を見た敵は本格的に淳弥から私達に狙いを変えてきたのよ。
「面白い。ならばお前達から消してやろう。」
冷たい微笑みを浮かべながら告げる言葉。
だけどその程度の脅しで恐れるつもりなんてないわ!
「消えるのはあなたよ!!」
怒りと気合いを込めて睨みつける。
本来の強気な態度を取り戻した私は、
竜の牙において最強の魔術師に立ちはだかることにしたの。
「あなたなんて天城君と比べれば雑魚同然なんだからっ!!」
私が思う最強の魔術師は天城総魔しか考えられない。
御堂君をも凌ぐ本物の天才。
彼の力を知っているからこそ、
相手が誰だろうと怯えることなく立ち向かえるのよ。
「私達をナメてると痛い目に合うわよっ!!」
「…ふっ。確かにな。」
全力で叫ぶ私の視界の端で、
もう一人の人物も動き出そうとしていたわ。




