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THE WORLD  作者: SEASONS
4月24日
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ブラッディ・ムーン

「闇を支配して月を制する者こそが最強の魔術師だ。何人たりとも俺に触れることなど出来はしない。」



絶対的なまでの無限の魔力。


秘宝という神にも等しい力によって竜道寺は無敵の力を示している。



「俺を止められるのはお前が持つ秘宝だけだ。死にたくなければ秘宝の力に頼ることだな。」



…あの秘宝か。



確かにあれを使えば月輪の瞳を無力化できるだろう。


だが俺の手元に秘宝はない。



…あったとしても使うつもりはないがな。



あの秘宝は使わないことを前提として預かったものだ。


例え殺されたとしても秘宝を使うつもりはない。



「何度も言わせるな。ないものはない!」


「…どうあっても見せる気はないか。」



話し合いを諦めたのだろう。


魔剣を構えた竜道寺が戦場に殺気を放つ。



「次は手加減しない。次の攻撃に対処出来なければ、お前は死ぬだろう。」



「…い、いやあああああぁぁぁっ!?」


「む、無理よ…勝てないわ…っ!」



死刑宣告と共に放たれる殺意を感じただけで、

上矢君や笹倉君は恐慌状態に陥ってしまったらしい。



恐怖を感じて怯える二人だが、

竜道寺は特に興味も示さないまま俺に狙いを定めている。



「死にたくなければ秘宝の力を示して戦え。」



最後の警告を終えた竜道寺が斬りかかってくる。



「ブラッディ・ムーン!!」



血ぬられた月の名を冠する魔術は、

その名に秘められた力を象徴するかのように斬撃の軌道に沿って深紅の衝撃波を生みだす。



「その身を自らの血で染め上げるがいい。」



死神の大鎌にも等しい深紅の衝撃波が放たれた。



…ちっ!!



速すぎるっ!



回避は不可能。


そして防御も不可能だ。



無限の魔力という絶望的な差を補う手段など存在しない。



「ぐ…ぅあああ…っ!?」



高速で放たれた衝撃波に体の反応も追い付かなかった。



握り締めた槍を振るう隙もないまま、

衝撃波の直撃を受けてしまったのだ。



「ぐぁぁぁぁっ!!!!!!!」



鋭い衝撃波に体を切り裂かれてしまったことで俺の左腕が宙を舞う。



「っぐああああああああっ!!!!」



直撃の寸前で体を捻ったことで胴体が分断される事態は辛うじて回避出来たようだが、

完全に回避することは出来ずに左腕から先が斬り落とされてしまったのだ。



「がぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



激痛を堪えきれずに大声で叫ぶ。


その間にも竜道寺は再び狙いを定めている。



「次は逃がしはない…。」



…くっ!!



死刑宣告を真実とするために。


一撃目よりも巨大な衝撃波が放たれようとしている。



「ブラッディ・ムーン!!」



魔剣から放たれる第2波。



…これは、無理かっ。



回避どころか身動き一つとれる気がしない。



…無念っ。



何も出来ないまま死を受け入れるしかなかった。



そうして目を閉じようとしたところで、

長野君が接近してきた。



「ちっ!させるかっ!!」



全力で踏み込んだ長野君が俺の体を捕まえて強引に衝撃波の射程から回避させてくれたのだ。



「すぐに治療を!今ならまだ間に合うはずですっ!!」



斬り離された腕を回収して回復魔術を発動させれば間に合うと判断する長野君だが、

もちろんその時間を竜道寺が見逃すはずがない。



「わざわざ見過ごすと思うのか?」


「くっ!」



冷酷に告げられた言葉に恐怖を感じる様子の長野君だが、

それでも必死に自分の心に言い聞かせている。



「逃げられないのなら…戦って勝つ以外に助かる道はないだろっ!!」



強く自分に言い聞かせて恐怖を押さえ込む長野君だが、

容赦なく放たれる衝撃波は俺達に迫ろうとしている。



「ならば共に死ぬがいい。」



…ちっ!



高速で迫る衝撃波の速度に俺達の回避は間に合わない。



長野君一人ならともかく俺が逃げるのは不可能だ。



…どうする!?



「撃ち落とすしか…っ!」



回避は不可能と判断して迎撃を考える長野君だが、

魔術の詠唱も間に合わない状況だ。



「くそっ!!」



もはや打つ手なしと判断したのだろう。



最後の手段として自らの体で盾になろうとする長野君の気配を察したことで力付くで押しのけることにした。



「まだだっ!!!」



必死に叫びながら槍を構える。



「まだ負けんっ!!」



動く右腕で槍を構えて衝撃波を切り裂く。



…だが。



「ぐあああああああっ!!!!」



破壊しきれなかった衝撃波が俺の体を切り刻んでいった。



「がっ!?ぐぁぁっ!!!!」



全身から流れ出る出血。


その怪我の中でも左腕からの出血が最も激しく、

俺の意識を強制的に奪いとっていく。



…くっ!



血が、足りん!



徐々に失われていく意識と死に近付いていく体。



もはや魔術を詠唱する力もルーンを構える気力さえもない。



…ここまでか。



その場に崩れ落ちてしまった。



竜道寺に立ち向かうことさえ出来ず。


仲間を守ることさえ出来ず。



竜道寺に敗北してしまったのだ。



…これが2年前であれば。



病が発症する前であれば力ずくで竜道寺を撃退することも出来ただろう。


勝てなくとも諦めさせることはできたはずだ。


だが今の俺にはそれだけの力がない。



…無念だ。



戦えない体を呪い。


力が足りない自らの弱さを呪い。



悔しさを感じて表情を歪めてしまう。



「かつての英雄が…ぶざまなものだな。」



…ああ、そうだな。



竜道寺の嘲りに反論できないまま、

体力を失って大地に倒れてしまったのだ。



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